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☆冒険の始まり

 夜。


 唐突な出来事が沢山あり眠れない状態が続き、思わず外の空気を吸いに扉を開けると、そこにはシャムロエと銀髪の幼い少女がいました。


「え、ふ、二人とも、どうして?」

「あはは、バレたか」


 もしかして気を遣って二人だけで旅に出ようとしたのでしょうか。


「トスカ……だっけ? 君にも迷惑がかかると思って、二人で抜けだそうと思ったのよ」

「二人って、その銀髪の子とは話せたのですか?」

「うーん、こう、察してくれた感じ?」

「曖昧ですね」

「でも、分かってくれたみたい。色々と迷惑をかけてごめんね」

「いえ、それよりも村の外は危険です。魔獣が沢山いるのですよ?」


 僕の忠告にシャムロエは苦笑しました。


「仕方が無いよ。ここにいても解決はしないし迷惑だけかかる。なら出て行く。答えは簡単だよ」

「でも!」

「これ以上話しているとマーシャさんを起こしてしまいそうだから、もう行くね」


 そして振り返り僕から離れていく。

 銀髪の幼女も手を繋いで離れていく。

 このままではダメな気がする。

 そう思い僕は。



 僕は右手の親指と人差し指を口に入れ、『ピィー!』と音を鳴らしました。



「っ! ちょ、今の音……足が……」

「……!」


 思った通り『足が止まって』良かったです。


「ちょっと、近所に迷惑がかかるでしょ?」

「大丈夫です。今の音はシャムロエ達にしか聞こえません」

「どういう事?」


「僕は音を見ることができ、音を操ることが出来る不思議な力を持っているのです」


「音を?」

「はい。今の音は単純に『足の動きが止まって欲しい』と願って音を出しました。単純な暗示も音に乗せることができます」

「それって、この世界では普通の事なの?」

「いえ、マーシャおばちゃんの話だと僕とマーシャおばちゃんだけだそうです」

「そう……」


 そしてシャムロエは少し考えました。


「ねえ、その力についても知りたいと思わない?」


 ☆


 翌日。


 悩んだ末に僕は荷物をまとめて旅の支度をしていました。

 結局旅に出ることにしたのです。


「まあ、別に一生帰ってこないわけでも無いですし」


 ブツブツ言いながら荷物をまとめていると、部屋の扉が開きました。開けたのはマーシャおばちゃんです。口笛を吹きながら僕に近づいてきました。


「トスカ。これを持っていきな」


 渡されたのはマーシャおばちゃんがいつも大事にしていた『クラリネット』という楽器です。


「え、これは」

「良いのさ。これはきっと役に立つ。トスカの力を引き出してくれる武器にもなるさ」

「良いの? 演奏が出来なくなるけど……」

「何を言っているのさ。暇があればその辺の草でも使って音を鳴らすさ」

「ありがとう!」


 そう言って僕は『クラリネット』を受け取りました。

 ずしっと重いクラリネット。これにはマーシャおばちゃんとの思い出が沢山詰まっています。


「さあさあ、二人が外で待っているよ」

「じゃあ行ってきます!」


 そう言って僕は荷物を持って外に出ました。


「遅いわよ。女の子二人を待たせないでよね!」

「……」


 シャムロエは相変わらず元気です。銀髪の幼い少女は相変わらず無言ですが。

 不安もありますが、実はワクワクもしています。


 夢にまで見ていた外の世界に一歩踏み出すのですから。


 ★


「マーシャさん。配達だよー。マーシャさん?」


 マーシャの体は既に限界を迎えていた。

 演奏はあくまで『自分の寿命を延ばす為の行為』であり、誰かの為に演奏をしていたわけでは無かった。


「マーシャさん? おいおい、こんな所で寝ていたのかよ」


 マーシャは銀髪の幼女の一言だけ発した言葉を理解していた。なぜなら、マーシャも同じ世界から来た『転移者』だからだ。


「んだよ、昼寝か? 鍵もかけずに不用心だな」


 何故この世界に呼ばれたかは分からない。だからそれを探るためにひたすら自分の奏でる曲に『寿命を延ばす暗示』をかけて生き続け、自分の存在意義を探していた。


「……おい? おーい?」


 だから、銀髪の幼女が現れ、約七百年振りに聞いた単語を聞いて、全てを悟った。


『私の使命はこれで正しかったかい?』


 心の中で思った。答えは返ってこない。ただそれで良い。

 何代も渡って育てた娘や息子達は子を産む度にこの世を去り、必然的にマーシャが赤子を育てる事になった。何故そうなるのか分からない。そういう運命なのかとも思えた。

 しかし、この不思議な能力を絶やすわけにもいかない。そう思いマーシャは頑張った。


 頑張った結果、ようやくギリギリの所で『彼女達』が現れた。


「た、大変だ! マーシャさんが! おーい! 誰か来てくれ!」


 きっとトスカなら大丈夫だろう。

 あの彼女達と一緒に世界を旅し、何かを見つけるだろう。


 一つ残念なのは。



 トスカの子供をこの目で見ることができなくなったことだろうがね。

挿絵(By みてみん)

 プロローグ部分はここまでとなります。次回から本編の始まりとなります!

 異世界ということもあり色々と言葉の選択には気をつけておりますが、もしも違和感などがありましたらぜひご連絡ください。

 また、活動報告では本作のキャラクターを使ってわちゃわちゃと何かさせております。そちらもご覧いただければと思います!

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