☆♪洞窟最深部
今回もおまけの劇中曲があります。少しでも雰囲気が膨らめば幸いです!劇中曲はあとがきのURLにて公開しております。
広い空間に到着しました。
そこはとても天井が高く、そして周囲は金色に輝く鉱石で埋め尽くされていました。
「これは……」
言葉が出ません。この鉱石の価値については分かりませんが、少なくとも全て武器や道具に加工すれば相当な金額になるでしょう。
そして……。
「トスカ、もし可能なら、『音』貰えるかしら?」
「音ですか?」
「この部屋、立っているだけで大変なの。その……『にんしきそがい』の所為かしら。視界が定まらないの」
シャムロエの動きが少しフラフラして、目も泳いでいます。
「わかりました。えっと、『認識阻害を散らす音』で口笛を吹きますね」
指を咥えて音を鳴らしました。
どうやら僕にも『認識阻害』の影響はあったらしく、視界がさらに良くなりました。
「マオは大丈夫だったのですか?」
「……大丈夫では無かった。『心情偽装』を自分に使って周囲を見ていた。正直この音はありがたい」
ぺこりと頭を下げるマオ。無理せずにそこは言って欲しいですね。
それはそれとして、口笛を吹いた瞬間目の前のモノに驚きました。
「これは……大きい鉱石ですね」
まるで作られた物であるかのような大きな鉱石。その大きさと輝きに見とれてしまいました。
「……ねてる?」
「マオ、何か言いました?」
「この大きな鉱石の中に何かが『寝てる』ような気がする。人……いや、精霊の魔力」
よく見ると確かに中心にうっすらと黒い影が見えます。
「ちょうど楽器もあるし、目覚めの音楽でも奏でてみたら?」
「今ですか? もし魔獣だったらどうします?」
「そのときは私やマオがなんとかするわよ」
「頼もしいですね……では」
そう言って僕は一曲クラリネットを吹きました。
題名はそうですね……『鉱石に眠るモノへの目覚め曲』にしますか。
♪
奏でた音楽は周囲の鉱石にも響き渡り、良い感じに音が重なったりと、なかなか楽しかったです。
「……ぱちぱち」
「周囲に響く音が心地良かったわ。逆に眠くなってきたかも」
え! 念じ方間違えましたか!
「ふふ、冗談よ、驚かないで。さて、そろそろ本題の寝ている方のお目覚めかしら?」
そう言ってシャムロエは大きな鉱石に顔を向けました。
その鉱石は徐々に溶け始めました。
中からは人の形をした少年が現れました。髪、目、口と、人としての特徴は全て揃っています。髪の色は銀色ですが、ところどころ金色の毛も見えます。
そして、その人は口を開きました。
「久々に目を覚ました気がしますね」
シャムロエとマオは構えました。いつ何が起こっても大丈夫な様に戦闘態勢です。
「貴方たちは?」
「僕はトスカ。名乗りました。貴方は敵ですか? 味方ですか?」
僕の言葉に少年は驚きました。
「ボクが見えるのですか?」
質問をしたのはそちらなのに、不思議な質問をしますね。僕が反応をする前にマオが代わりに答えました。
「……トスカが『認識阻害』を散らした。そしてトスカの質問に答えて欲しい。敵か味方か」
マオの真剣な質問。それに対して予想外の出来事が発生しました。
銀髪の少年からは大きな一粒の涙が流れました。
その姿を見てマオは驚き、僕の服をつまんでオロオロしまう。
「……いや、泣かせるつもりは無かった。その……トスカ、助けて」
「僕も予想していませんよ! 敵か味方かのどっちなのかだけ本当に言って貰えませんか!」
ようやく少年は答えました。
とてもゆっくりに、そして感情を込めて。今まで辛いことがあったのでしょうか。そんな思いが込められた声の音が見えました。
「ボクの名前はゴルドです。鉱石の精霊です。少なくとも貴方達に害を与える存在ではありません」
今回のおまけの劇中曲のurl(Twitter)はこちらです!
https://twitter.com/kanpaneito/status/1115367051839696897
二章新キャラクター(?)ゴルド君登場です。




