洞窟の異変
鉱山の中は入り口こそ明るいのですが、進むに連れて暗くなってきました。
暗い中でも少しだけ光って見える物もあり、それは魔力を帯びている鉱石の原石だとか。
でも小さいので価値としては少ないそうですね。
ちなみに発掘した鉱石は受付で買い取られ、持ち帰ることは出来ないそうです。砂金は小さすぎるので例外だそうですが。
この辺りも例の戦争と関係していそうですね。
「てえい。ふーん、本当に生えている感じね」
さりげなくシャムロエがその辺の壁を殴って穴を空けました。そこには足の指ほどの大きさの鉱石がゴロゴロと転がっています。
「むやみに壁を破壊しないでくださいね。天井が落ちたら終わるので」
「それもそうね」
「それもそうねじゃないですよ!」
何も考えて無かったんですね!
「でも不思議ね。毎日あれほど人が来る中で、まだこんなに鉱石の原石があるなんて。まだ私たち一般人がこれるくらいの距離しか歩いてないわよ?」
そうです。周囲は暗くなったとはいえ、全然前には進んでいません。
入り口付近でも鉱石は十分取れるため、ここまで来る必要は無さそうです。
軽く手を叩いて、反響する音を見てみました。
……まだ奥に……何かある?
そんな違和感を感じました。
「ねえトスカ。これ以上行っても無駄そうだし、戻らない?」
「……賛成。パムレットもある」
シャムロエとマオの提案に僕は一瞬同意しかけました。
次の瞬間。
微かに僕の叩いた音以外の音が奥から帰ってきました。
「どうしたの? 険しい顔して」
「……お腹すいた」
「待ってください、もう少し進みませんか?」
僕の提案に、いつもならシャムロエもマオもついてきます。しかし、今回だけは変でした。
「無駄じゃない?『どうせ行き止まり』でしょ?」
「……魔力の反応も途切れている。『帰った方が有意義』」
何故か強い言葉。まるで何かに言わされているような。
「マオ、魔術について質問なのですが、何かを隠す魔術ってありますか?」
「……唐突、でも答える。『隠す』にも色々定義はあるけど、一番手軽なのは神術の『認識阻害』。これを使われた人は一時的に『周囲から認識できなくなる』というもので、実際はいるのに視線や思考がゆがめられる凄い術」
認識阻害。認識できなくなる。思考がゆがめられる。全然手軽には見えませんが。
ですが、仮にそれがこの鉱山のどこかで使われていて、たまたま僕が目ではなく音を見て何かを見つけたとしたら……。
「やっぱり進みましょう! この先に何かがあります!」
「いつもより強引ね。何か見えたのかしら?」
「見えたのです! 音が!」
僕の真剣な言葉にマオは僕に向けて何かを唱えました。
「……っ! これは。ごめんトスカ。気がつかなかった」
「な、何をしたのですか?」
「……いつものトスカに『心情読破』を使った。でも使って良かった。この先は『認識阻害』が使われている。何かが……ある!」
その言葉にシャムロエも真剣な表情へ変わり、前へ進みました。
この先の『何か』を求めて。




