マオに襲いかかる特殊な力
ミッドガルフ貿易国の資金源となる鉱山は、申請を出せば軽い面談で合格すれば入って発掘することができるそうです。
鉱山から取れる銀や銅がどれほどの物なのか、一度確認するべく僕達は鉱山をとりまとめている受付へと向かっていました。
そんな道中、ちょっとした事件です。
「……トスカ、マオは今謎の力によって動けない」
「どうしました!」
すぐにクラリネットを出して、何か音を出そうとしましたが、マオがそれを見て右手をぶんぶん振ります。
「……きっとトスカの音を聞いても無駄。これは精神に直接攻撃する特殊な力」
「げ、原初の魔力でしょうか」
色々と話を聞いて、正直疑心暗鬼な部分もあります。マオほどの力の持ち主が動けないとなると、僕の身も危険なのでは!
「トスカ、原因はあれよ」
シャムロエが僕の方をポンポンと叩いてある場所に指を指しました。
『パムレット専門店・ミッドガルフ支店』
「さあ、急いで鉱山へと行きまがああ!」
急に脳内に直接声が響きました。音は見えません!
『パムレット食べたいパムレット食べたいパムレット食べたいパムレット食べたいパムレット食べたいパムレット食べたいパムレット食べたい』
「ぎゃあああ! あ、頭が!」
「だ、大丈夫トスカ?」
マオを見ると、若干右手が光っています。何かしましたね!
「……体が勝手に動いた。大丈夫、身体に影響は出ないように最善の努力はした」
「勝手に動いたのに努力はしたってどういう意味ですか!」
「……そもそもまだトスカからパムレットもらってない」
そういえばそうでしたね!
「わかりましたよ。では一つだけですからね」
「……(ぱああああ)」
今までに無い笑顔に僕は気が抜けかけました。
「甘いんだか、うっかりなのやら」
「それにしてもずいぶんと大きなお店ですね。ガラン王国ではあの屋台だったのに、ここは建物ですよ」
とても可愛らしい建物。看板にはパムレットが描かれており、行列も出来ています。
「……大変。トスカ」
「今度はどうしました?」
「……まさか二十種類も味があるとは思っていなかった」
僕はもうマオの『大変』を信じないことにしました。
マオの言う大変は、きっと一時の緊張をほぐす力もあるかも知れません。
その場で僕はため息をつき、言いました。
「約束は約束です。一つだけですよ」
☆
鉱山採掘所の受付がある施設に入ると、周りの殆どは男性でした。やはり鉱山採掘なので力仕事が主なのでしょうか。
受付へ足を運ぶと、一番筋肉が輝いているお兄さんが相手でした。
「三名ね。二人はそれなりに身長もあって大丈夫だが、もう一人は子供か?」
「……マオ、実は超大人」
パムレットが見事に説得力を削いでくれますね。
「はは、まあそれなりに危険な場所へ行かなければ大丈夫だろう」
そう言って、凄まじい筋肉の持ち主の受付は書類に文字を書いていました。
「結構子供も来るのかしら?」
「ああ。一種の観光地にもなっていて、子供なんかは『砂金』を取りに来るんだ」
「持ち帰っても良いの?」
「『砂金』はそれなりにまとまってなければ使い道が無くてな。子供が取る量はほんの少し。それくらいはお土産に渡してるのさ」
「案外良心的ね」
「と言っても、また『生えてくる』し、将来その子供がここの土地に住むきっかけになれば良いさ」
凄い筋肉をしつつも笑顔は爽やかです。僕とは正反対ですね。
「……む?」
「どうしました?」
マオの疑問を思わせる表情に小声で訪ねました。
「……鉱石が生えるというのは想像がつかない」
「僕もそれは思いましたが、生えると思えるほど大量にあると捉えて良いのでは?」
「……心を読んだけど、本当に生えるらしい。ちょっと気になる」
またマオは心を読む術『心情読破』を使ったのですね。まあ悪さするわけではありませんし、見逃しますが。
「さあこれで入場は出来るぜ。一応危険区域もあるが、立ち入り禁止では無い。足場が悪いから怪我だけ気をつけてくれ。発掘時の怪我は自己責任だからな」
「ありがとうございます」
入場書類を受け取り、僕達は早速鉱山へと向かいました。




