♪☆トスカの意地の協奏曲
このお話には劇中曲がおまけであります。文章で表現はしておりますが、よければお聴きいただければと思います。(Twitterにて公開中)
ミッドガルフ貿易国は、鉱石の発掘が盛んな場所であり、その資源を基に国を裕福にすることに成功したそうです。
ミッドガルフという名前の由来は、まだミルダ歴が制定される前に『ミッド』という少年がこの地方を守っていたそうです。
そしてミルダ歴が定められてから数百年後。ガルフという商人が鉱山を有効に使って国を裕福にしようと提案し、その時代を超えて活躍した二人の青少年の名前を取ってミッドガルフと名前がつけられたそうです。
そして目の前には凄まじく活気のある光景が広がっています。
「さすが貿易国ね。周りは商人だらけ」
立ち並ぶテントの山。それだけで一つの村が出来そうなくらい沢山あります。全てが商人のテントとは思えません。
薬草から武器、服や装飾品。全てがそこに揃っています。
そんな中、マオが僕の服をくいっと引っ張りました。
「どうしました?」
「……あれも楽器?」
マオの指の先には何本もの鉄の板が机に並んであり、それが左から右へ小さい順に並んでいます。
少し気になったので僕は手を叩いて跳ね返った音を『見て』みました。
「もしかしたら、叩くと小さい鉄から大きい鉄にかけて、音の高さが変わるのかもしれませんね」
「お、お客さん、目の付け所が良いね」
その店の店員さんなのか、若いお兄さんがニコニコしながら現れました。
「へえ、これも楽器なんだ」
「そうさ。これは鉄琴。この棒を使って叩くと誰でも簡単に演奏が可能なんだ」
「それは興味深いですね」
ガラン王国の音楽団も色々な楽器を持っていましたし、他の楽器を間近で見る機会はあまりありませんでした。
ぽーん、ぽーん、と、マオが叩いて遊んでいます。
「……凄い。これでマオもトスカに勝てる」
「僕から唯一の特技を奪わないでください」
ぽぽぽぽぽーん、と、今度はシャムロエが叩きました。
「へえ、私の方がうまいんじゃ無い?」
「二人は僕の存在を消したいのですか!」
泣きますよ!
「へへ、初心者にも簡単に扱えるこの鉄琴だが、これはこのように演奏もできるんだ」
そう言ってお兄さんが棒を片手に二本ずつ持ち、叩きました。
じゃじゃじゃじゃーん。
「な、『一つの楽器で複数音が鳴らせる』んだ。面白いだろ」
ははは。
はは。
「良いでしょうお兄さん。僕と即興で演奏しましょう!」
「あ、私も参加するわ」
♪
「お客さん、なかなかやりますね」
「お兄さんもね」
僕と楽器商人のお兄さんは息を切らしていました。
しかし二人揃って思うことがありました。
「「なんでシャムロエ(お客さん)は同じリズムでタンバリンを叩き続けられるのですか!」」
「なんで矛先が私になってるの!」
演奏している間、隣に置いてあった叩くと綺麗な音が鳴るタンバリンという楽器をシャムロエがずっと叩いていました。
僕とお兄さんはずっとその音のリズムで演奏を続けていましたが、ずっと一定のリズムを保って最後まで叩き続けていました。
「これ……思った以上に面白いわ」
「「僕(俺)は疲れましたよ!」」
地味に難しいリズムを刻むシャムロエに合わせるのに必死で、最後の方は僕とお兄さんが息を合わせて一曲を即興で演奏していました。
いつの間にか僕達の周りには人が集まってきていました。
「面白い楽器だ。一つくれ!」
「へえ、たんばりんって言うんだ。子供に良いな」
「その叩く楽器いくらだ!」
どっと客が押し寄せてきて、お兄さんは急に忙しくなりました。
「ちょ、ちょっと待ってください、順番に!」
僕はその光景を見て、一歩下がりました。
「……良いの? トスカ、楽しそうだった」
「ええ、お兄さんは楽器を売るのが仕事です。まさかあそこまで演奏出来るとは思いませんでしたが、本業を優先させましょう」
そう言って再度お兄さんを見ると、僕と一瞬だけ目が合いました。
そして少しだけ手を振ってきたので、僕達も手を振ってその場を去りました。
こちらで劇中曲を公開しております(Twitter)
https://twitter.com/kanpaneito/status/1112691087502512128
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