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☆脱出、そして謁見の間へ

「おい、そこで何をしている!」

「……えい」


 マオが魔術を唱えて兵士を眠らせました。

 手を叩いても良かったのですが、今僕達は廊下を全力で走っています。

 手を叩く余裕はありません。


「……む、悪魔の魔力があっちからする」

「急ぎましょう!」


 大きな扉が突き当たりに見えました。

 この先はおそらく謁見の間と呼ばれる場所でしょう。

 重い扉を開けて中に入ると、そこにはロープで縛られているシャムロエと、ガラン王、そして黒服の男がいました。


「な、何だ貴様は!」

「ほう、牢屋から出ましたか」


 ガラン王は僕達を見て驚いています。一方で黒服男は冷静です。


「シャムロエ! 無事ですか!」

「馬鹿!」


 叫んだのはシャムロエでした。え、何故僕が怒られるのですか?


「ははは、ははははははははは!」


 疑問に思っていた矢先、黒服男はその場で大笑いをしました。


「……何か変。心も読めない」

「よく分かりませんが、シャムロエを連れて帰りますよ!」

「そうは行きません!『火球』!」


 黒服男から火の玉が放たれました。


「……む、『火球』」


 すかさずマオが同じ魔術で相殺しました。って、凄いですね。


「素晴らしい、強い魔術師に『王女』までいるとは」

「王女? どういう意味ですか?」


 僕の疑問に黒服男が不気味な笑みを浮かべて答えました。


「似ていると思っていましたので尋問しておりましたが、まさか『初代』の王女がこうして生きているとは!」

「意味が分かりません!」

「分からなくても良いのです。事実がそうなのですから! ガラン王の妻、シャムロエ王女。これはワタクシが望んだ世界、ワタクシが作ろうとしていた世界なのですから!」


 両手を広げ声高らかに言う黒服男。聞いていて感じが悪いです。


「れ、レイジよ。つまりそやつは我の妻になる人なのだな?」


 横に大きなガラン王が恐る恐る黒服男に問いかけると、黒服男は突然無表情になりました。



「貴方は用済みです。所詮微かに血の繋がりがあるだけの代用ですから」



 躊躇も無く向けられた右手から火の玉がガラン王に放たれました。


「ひい!」


 ぼう! ぼん!!


 そう音を立ててガラン王周辺が黒煙に覆われました。


「酷い」

「酷くはありません『王女』。所詮代用は代用。本物が見つかれば何も問題無いのです」

「だから、その王女って意味がわからないわ」

「記憶が……無いのでしょうか。まあ良いです。その金髪にシャムロエという名前。これは偶然ではありません。運命なのです!」


高らかに笑う黒服男。一度黙らせるしかありません。ふと周囲を見ると、マオの姿が消えていました。さっきまで僕の隣に……。



「……この世界はやっぱり理不尽の塊。マオも記憶が無いけど、人を簡単に殺すのは見過ごせない」


挿絵(By みてみん)


 ガラン王のいた場所から『マオの声』が見えました。

 って、まさか!


「こ、小娘!」

「……マオと呼んで欲しい。マオは別に助けたいと思っていない。けど恩義があるならそれなりに敬意を表して欲しい」

「あ、ああ」

「……トスカ、ガラン王はなんとかする。シャムロエのロープを切って欲しい!」

「そう言われましても……試してみますか」


 僕は人差し指と親指をくわえました。


「何をするつもりですか!」


 そして思いっきり息を吸い込みました。


「させません!『グランド・ウォール』!」


 シャムロエの前には土の壁が生成されました。しかし僕の『この能力』なら大丈夫でしょう。


「いひはふよ! しゃふほへ!(行きますよ! シャムロエ!)」


 ぴいいいいいいいい!


 強く放った音は一直線にシャムロエのロープへ飛んでいきました。


「……何をしたのですか?」


 黒服男の目にはただ僕が息を思いっきり吹いたようにしか見えなかったでしょう。

 しかし、次の瞬間、黒服男の顔面には強い拳が放たれました。


「さあ、私の出番ね」

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