人間と精霊の作戦
「鉱石の神……いや、父様、この場をお願いします!」
「うむ、良いものを作れ!」
ゴルドはアルカンムケイルに鉱石の盾を渡して僕の方へ来ました。
「……マオの魔力も貸す。あとで返して」
「助かります! では、合金で行きます!」
筒状の鉄を生成し、入り口は広く、出口に向かって細くなるように生成してもらいました。
「トスカ、本当にこの形で?」
「はい。一直線の細くて大きな音を飛ばすためにこの形が一番です! あとはあの女神がこの一直線上に立てば準備万端です!」
鉄の筒の先から少しずれたところに女神が立っていました。これでは音は女神から通り抜けてしまいます。
そして鉄の筒は重いため、簡単に動かせません。
「なら、動かせば良いのよ」
「そうね。お母さん」
「え?」
一瞬耳を疑いました。
僕の身長よりも少し大きめの鉄の塊りを……動かす?
「久々の再会後の最初の共同作業が『鉄を動かす』なんて、なかなか面白いわね」
「ええ。何年待ったかわからないけど、私達らしい行動でもあるわね。そうよね、ゴルド!」
「そうですねシャルドネ。お願いします! 貴女達なら可能です!」
え、シャムロエは力があるので可能かもしれませんが、その娘のシャルドネって普通の人間ですよね?
「「せえええええええいい!」」
「えええええ?」
も、持ち上げました!
「ど、どうなっているのですか?」
「……信じ……られない」
マオが額に汗をかいています。確かに目の前の光景には驚きますが、それ以上に何があるのでしょうか?
「……あのシャムロエの娘のシャルドネ……『何も考えていない』」
「え、それは……馬鹿という事ですか?」
『誰が馬鹿よ! 初対面でそれは無いと思うわ!』
「……違う。感情が無い。だから人間の力をすべて出し切っている。脳の制御が無い……だから……強い」
「え、どういうことですか?」
ゴルドが僕の疑問に対して答えました。
「シャルドネはかつてシャムロエを目の前で殺され、心を失いました。その所為か力加減ができないみたいで、すさまじい力を出せるそうです」
え、でも今目の前にその本人(母親)がいますよね?
「……訂正します。あれは平常運転ですね」
『ちょっとゴルド! 久々の再会なんだからもう少し優しくても良いじゃない!』
グググと鉄の筒が動き出し、女神が筒を通して見えました!
「そんな動き、避ければ良いのよ!」
「されるわけなかろう。のう、我の娘」
「いつ私が貴女の子になったの……よ!」
ヒルメとカグヤが女神の背中にいつの間にか立っていました。
そして光の柱を生成し、鎖のようなもので女神の身動きを封じました。
「は、離せ!」
「それは無理な相談じゃ。貴様は一度反省するべきじゃ」
そして僕は
思いっきり息を吸って
思いっきりクラリネットを奏でました。
曲はもちろん、すべての人間、精霊、神、生物が耳を傾けてくれるような願いを込めた曲名。
そして音の魔力の所持者の血統が代々引き継いだ『目に見えない目に見える音』。
『呼声』を。