光の神『ヒルメ』
一言で言うと『神々しい』という感じの少女でした。
天照大神と名乗りましたが、呼ばれる時は『ヒルメ』の方が良いとのことです。
「ふむ、人の身が何人かいるのう。しかしそちはずっとここにおったのか」
シャムロエの背中に隠れているシャルドネを見てヒルメは言いました。
「来るなああ! ここは私の世界だ! 貴様が来て良い場所ではない!」
「あながち間違いではないな。我とお前の戦いで二人の人間が原初の魔力を帯びてしまった。我は来るべきでは無い存在じゃのう。じゃが……」
そう言ってカグヤとマリーと……マオを見ました。
「我の魔力を帯びた人間と、我の世界の人間がいるなら、守るのが『親』の仕事じゃよ」
その言葉にシャムロエの心臓の音が大きく鳴り響くのが見えました。
「何……これ」
「お母さん?」
震えるシャムロエをシャルドネは心配しました。
「私、魔術とかはこれっぽっちも使え無いけど、これだけはわかる。あのヒルメって神様……すごいわ」
「当然です。シャムロエはボクの魔力を少なからず持っているので魔力を若干感じるはずです。ただ、正直ボクもこれは……足が震えます」
何かすごい力が漂っているのは感じ取れます。ただし、音以外見えない僕にははっきりとはわかりません。
「何もかも、何もかもうまく行ってたのに! 貴様たちが、お前が……カンパネがあああああああああああああ!」
そして女神はまた光線を放ちました。
しかし。
「光は我の専売特許じゃよ。それになんじゃそれは。『魔術』ではないか」
「黙れ黙れ黙れ! そこの忌々しい娘がこの神たる私の頭に人間の作った魔術なんてものを埋め込んだからああああ!」
暴走という言葉以外思いつかない言動に驚く僕たち。
ヒルメが光の盾で防ぎつつ、マオやカグヤは魔術で攻撃をしています。
「消えろ消えろ消えろ消えろ消えろ!」
女神の声は聞こえるたびに恐怖を与えてきました。
このままではいずれやられてしまいます。何か良い方法が……。
そう思った瞬間でした。
僕の意識はすっと消えて、まるで気を失う直前の感覚に陥りました。
☆
ふわふわと体が浮いています。先ほどの白い部屋とは異なり、今度は真っ暗です。
「あーあー」
声を出して反射音で周囲を確認しますが、音はどこまでも遠くへ行き、やがて消えていきました。
「夢?」
そんな独り言を言うと、前がボヤっと光だし、中から人のような何かが現れました。
「夢と現実の中間……と言っても間違いではありません」
銀色のローブに銀色の髪。身長は僕の倍ほどあります。マオに少し近い様にも思えますが、一体何者でしょうか。
「私の声が……『見えますね』?」
「は、はい」
「ふふ、良かった。きちんと『私の』魔力が受け継がれているのですね」
「私の……?」
「はい。本来音の魔力の持ち主は死後にしか私と会えませんが、ここは『カミノセカイ』。ちょっと卑怯ですが、こうして会えました」
「貴女は?」
そう尋ねると、髪で顔が隠れていましたが、手で前髪を動かし、顔を見せました……って……貴女は!
「私は音の神『エル』です。会えてうれしいですよ。トスカ」