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神に抗う人間たち

「親に向かって狂ってるなんて、面白いことを言うわね」

「今まで耐えてきました。ですがそろそろご休憩をしていただきます!」


 カンパネが女神に叫びました。

 今まで不気味な笑顔を見せていたカンパネですが、今は真剣そのものです。


「それに、私の行動のどこが狂っているのかしら?」

「星を作り、星を壊す。罪なき人も消す。その行動が以前から不愉快でした!」

「その行動に関してはボクも同感ですね」


 カンパネの言葉に続いてゴルドも話しました。


「ふふ、私の行動に不服と。それに対して抗うのは良いとして、無関係な人間と部外者まで連れてきて……許されるとでも?」


 女神の視線は僕たちに向けられました。

 確かに僕たちはこの世界……神様の住む世界の住人ではありません。


「理由は簡単よ」


 シャムロエが前へ出ました。


「私の娘が悪い存在に捕らわれている。これだけでも戦う理由になるわ」


 輝く木の枝のようなもので捕らわれている金髪の少女。ぐったりとしていますが僕にはわかります。確かにあの子の心臓の音は正常に動いています。


「人間が人間を助ける感情も私にはわからないわね。まあ貴女の理由は分かったわ。でもそこの子供はどうなのかしら? カンパネの作った世界出身でも無いでしょう?」


 指をさされたのはマオでした。

 マオは確かにチキュウ出身で、部外者と言われれば部外者です。


「……理由は……ある」

「へえ? 何かしら?」



「……パムレットとパムレが……消えてしまうかもしれないから」



 ……えっと、マオさん?

 この状況でパムレットですか?


 と、僕は一瞬緊張が抜けてしまいましたが、女神の反応は意外なものでした。


「ぱむれっと? ぱむれ? な、何かしら? カンパネの世界の人間?」

「……違う。無機物」

「何かの物かしら?」

「……半分正解。パムレットとパムレは親子」

「え……親子? 人間?」

「……違う。生きていない。けど生きている」


 マオは真剣でした。いや、確かにマオはパムレットのためなら国の問題も解決しようと動きますが、今回も同じ感覚なのでしょうか。


「い、意味が……わからない」

「……これは人間にしかわからない。パムレットは究極の極限。パムレットがあるからこそパムレが生まれ、パムレがパムレットを持ち上げる。パムレットとパムレは共存していてパムレはパムレットをパムレットでーー」



「ああああああああああああああああああああああああああ!」



 女神が叫びました!

 え、ど、どうしたのですか?


「あ、ありえない。創造神の私が知らない何かを人間が作ったとでも言うの? 人間がまた私を追い抜こうとするの? 私がまた……私があああああああ!」


 女神が強く頭を抱え、叫んでいます。あまりの大声に驚き、瞬時の判断でその音を横にそらしています。


「トスカ! 『神の力を打ち砕く音』を出せますか!」

「出せます! しかしどこに!」

「シャムロエ! 腕を!」

「え?」


 シャムロエが腕を出すと、そこには鉱石で作られた手袋が生成されました。

 よく見るとところどころ空洞ができており、音がかすかに手袋から鳴り響いています。


「トスカ! この手袋にその音を!」

「わ、わかりました!」

「……シャムロエをぶっ飛ばすのは任せて」


 そして、僕は思いっきりクラリネットを吹きました。

 その音はシャムロエの手袋に当たり、手袋の周囲で『神の力を打ち砕く音』が漂っています。


「……行く。『爆炎』!」


 ばあああああああああん!


 そんな音がシャムロエの足周辺から鳴り響き、シャムロエは吹っ飛びました。吹っ飛んだ先は……。


「ああああああああ! させるかああああああああああ!」


 女神がシャムロエの前に出てきました。これではぶつかります!


「『プル・ブラビディ』」

「なあ!」


 少し離れた場所にゴルドの父『アルカンムケイル』が杖を持って立っていました。


「久々に息子の顔が見れた。ここはひとつ張り切らせてもらおうかのう」

「こうせきいいいい!」

「ワタクシもいることを忘れないでもらうわ! 『心情偽装』!」

「ぬあああああああああ!」


 マリーの目が金色に……いや、真っ赤になりました!


「がああああああ、こおおおむうううすめええええ! はああああああ!」

「ぐう!」


 何かが弾ける音が見えました。

 同時にマリーの目の色が通常の紫色に戻りました。


「時間は稼いだわ! シャムロエ! 行って!」

「微調整は任せろ!」

「はあああああああああああ!」


 途中でカグヤがシャムロエに魔術を放ち、方向を微調整していました。そして……。


「こわれろおおおおおおおおおおおおおおおおおお!」


 ぱりーん。


 とても軽い音でした。

 しかし、同時にシャムロエの手袋は砕けました。


 光の枝が砕けると同時に勢い余ってシャムロエは金髪の少女へ突っ込んでいきました。



「あはは。あははは」



 シャムロエの方向から笑い声が見えました。いや……これは全員が聞こえているはずです。


「まさか……助けてくれるのはゴルドだと思ってずっと待ってたら……それ以上の……一番会いたくて、そして一番お話したくて、一番お礼を言いたい人で、もう会えないと思っていた『お母さん』に助けてもらえるなんてね!」


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