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神々の戦い

 クロノが二人の頭に手を置いた瞬間、二人は倒れました。

 瞬時にマリーが魔術を使ってふわりと浮かせ、地面への衝突を避けました。


「これは」

「一時的なものよ。脳に大量の情報が入るから、少し寝てもらったの」

「そう、ですか」


 すーすーと寝息を立てて寝る二人を見てほっとしました。


「さて、まさかここに原初の魔力が五つ集まるなんて思わなかったわね。光に鉱石に神に……そして行方不明だった音」

「年中行方不明のクロノが言うと笑えるわね」

「はあ、これ以外の御用はないかしら?」

「実はもう一つあります」


 ゴルドが真剣な目つきでクロノを見ました。


「一緒に神々の住む世界……『カミノセカイ』に来てください。もちろんカグヤもです。そしてボクと一緒に女神と戦ってください」


 かつてない緊張感に空気が凍りました。


「無理よ」


 最初に答えたのはクロノでした。


「マリー、貴女がいるのにこの状況は何かしら?」

「あら、ワタクシはついていくわよ?」

「何ですって?」


 クロノは驚いた表情でマリーを見ています。それほど意外な答えだったのでしょうか。


「神の魔力を持つ神。意味不明な存在だけど、その能力の一部を持っている身としては見過ごせないのよ」

「カグヤはどうなの!」

「私も行くわよ。神には借りがあるのよ。あ、女神や魔力の『神』ではなく……『神様』という存在にね」


 その答えにクロノは再度驚きました。


「所詮人間の愚かな行動ね。神に勝てると思っているの?」

「だからこそ、唯一この中で神であるクロノにお願いをしているのです。ボクは精霊で他は人間です。少しでも可能性を増やしたいのです」

「でも戦ってどうするの? 相手はあの『女神』よ?」

「助けたい人間がいるのです」


 それは僕が一瞬見た少女……シャムロエの娘のシャルドネでしょう。


「最初は女神を倒そうと考えていました。ですが、一度戦ってわかってしまいました。所詮精霊が勝てる相手では無いと」


 ゴルドは強く拳を握りました。悔しい感情や憎しみがあるように見えます。


「原初の魔力に対抗できるのは原初の魔力だけ。そしてボクはシャルドネを救う。それができるのであればどうなっても良いです」

「へえ。なかなかの覚悟ね」


 クロノが微笑みました。


「良いわ。別の形で協力はしてあげる。でも同行はできない」

「何故ですか!」

「神と神が戦うと力が反発して色々な場所に影響を及ぼすのよ。そこのマリーやカグヤのようにね」

「え?」


 全員が声を漏らしました。マリーとカグヤのようとは一体?


「その昔、名も無き女神と、光の神『ヒルメ』が喧嘩したのよ。私は時間跳躍をして『私はその場にいなかったことにした』けど、結果その二人の魔力が反発してマリーやカグヤなどの人間なのに魔力を帯びた人が現れてしまったのよ」

「……神々の戦い」


 微かに『見覚え』のある幼い少女の声がこちらへ来ました。

 音の出所を見ると、マオが起き上がっていました。


「……サイトウがお話してくれた。色々な神話。色々な物語。事実か妄想かは不明でも、そういう単語がある」

「おはよう。気分はどうかしら?」

「……過去最悪。色々な記憶が流れてきて、大切な人が大怪我を負った」

「その人は?」

「……そこの瓦礫に隠れている」


 振り向くと、瓦礫の陰から一人の男性が現れました。白衣を着た年上の男性です。

 髪はくたびれていて、真っ白になっており、やせ細っていました。見たところ色々と苦労したのかと思える風貌です。


「ようやく……会えたな」

「……サイトウ。教えてほしい」

「なんだ?」


 マオの声が徐々に震えてきました。記憶が戻り、目の前にはサイトウ……つまり記憶の中にいた人の名前でしょうか。おそらく大切な人なのでしょうか。



「……こういうとき、マオはどうすれば良い? うれしい。寂しかった。忘れていた。悔しい。色々な感情が頭を駆け巡って、どうすれば良いかわからない」



 マオは目に涙を浮かべながら凄く考えていました。

 こういう時、年上の僕としては背中を押してあげるだけです。それに、今まで僕は二つの目標があり、ようやく僕の目的の一つが達成したわけです。


「よいしょ」

「……! トスカ、何を!」


 僕はマオを持ち上げました。

 そして、その白衣の男性の元へと運びました。


「貴方がマオの『父親』ですか?」

「そうとも言えるし、そうとは言えない。血のつながりが父親の条件というならば、俺はマオの父親ではないと言える。だが……」


 そして、白衣の男性は手を伸ばしました。

 僕からそっと受け取るようにマオを抱きしめました。


「科学的概念を無視しても良いというのであれば、俺はマオの父親だとはっきり言おう」

「……サイトウ! ただいま!!」

「ああ、お帰り……マオ!」


 やがて白衣の男性サイトウは目から大粒の涙を流しました。

 同時に僕は肩の荷が下りる感覚と、どこか寂しさを感じる不思議な感覚が芽生えました。



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