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転生少女シャムロエ

 草原が広がっていた。

 タプル村に地形が似ているけど、家が少ない。

 確かクロノが私に触れて、そこから意識が遠のいたところまでは思い出せた。

 ここはどこかしら?


『フォフォ、ここはお主の記憶じゃよ』

『記憶?』


 目の前に突如現れた人影。かなり年老いているように見えるわね。どこかゴルドに面影が似ているけれど、親戚かしら? 精霊に親戚という概念があるかは不明だけど。


『儂は鉱石の神、アルカンムケイルじゃよ』

『鉱石の神?』

『まあ、簡単に言うとゴルドの父じゃ』

『あら、それはそれは』

『そしてお主の父でもある』


 ……。


『あの、沈黙は苦手なのじゃが』

『冗談かと思ったわ。え、私の父?』

『だって、お主は鉱石の魔力を持っているのじゃろう? つまり儂の娘ということじゃ』


 フォッフォと笑う目の前の自称鉱石の神とやらに少し苦笑するも、嘘は言ってなさそうね。


「おかーさん! 見て! お花!」

「綺麗ね。ふふ、頭に飾ってあげる」

『!』


 広い草原の真ん中に金髪の人間が二人。一人は私にそっくりね……私が子供だった頃かしら?


『逆じゃ』

『逆?』

『あの子はお主の娘のシャルドネ。その隣にいるのがお主じゃよ』


 徐々に記憶が水が流れるように頭へ入っていき、色々と思い出す。ええ、本当にあれは……私の娘?


『正確には『娘と認識させられた存在』じゃな』

『娘と認識?』


 私の記憶では確かにあの子を産んだ覚えが……覚えが……あれ?


『昔話をしよう。かつてこの世界が作られた話を』

『世界が、作られた?』

『この世界はカンパネが作った最後の希望の世界。そして神が人間に全てを託した世界なんじゃ』


 目の前の自称鉱石の神が手から丸い石を出した。まるで磨かれたかのような綺麗な球体ね。


『夜空は見たことがあるかね?』

『夜空?』

『そうじゃ。言葉通りの夜の空じゃ』

『当然。何もない暗闇。あ、チキュウに来てからはキラキラと輝いている何かは見えたわね』


 それとその球体と、何の関係があるのかしら?


『この球体は『星』じゃ』

『ほし?』

『これを何倍……何千倍も大きくしたものこそ『地球』となる。今お主はそこにいるのじゃよ』

『へえ。じゃあ歩いても行き止まりが無いのね』


 丸ければ一周するだけ。終わりは無いけど同じ景色が続く。もしかしてミルダ大陸もそうなのかしら?


『ミルダ大陸は『ミルダ大陸』なのじゃよ』

『どういうこと?』

『その大陸しかない。球体でもない。歩き続ければ行き止まりがある。そういう概念なのじゃよ』

『難しいわね。どうしてそんな世界に私が住んでいるのかしら?』

『さっきも言ったようにあの世界はカンパネが作り出した神々の最後の希望なんじゃよ。カンパネは女神が作った意思を持つ未熟な神。故に星は作れず、中途半端な『世界』を作り、そこへお主らを作ったのじゃよ』


 目の前には大人の私と、その娘シャルドネが遊んでいた。

 ほほえましい光景につい私も笑ってしまう。


 そして。



 スパッ!



『なっ!』

『お主は突如現れた異世界の死神……いや、悪魔によって殺された』


 大きな鎌を持つ悪魔のような何かに、大人の私は切られていた。

 あまりの光景に言葉が出なかった。


『この後は?』

『この先は死んでおるのだから、記憶は無いのじゃろう』


 目の前の光景が徐々に白くなり、白い空間に私と自称鉱石の神だけとなった。


『お主の記憶はカンパネによって作られた記憶じゃ。娘という存在も『育てた』という記憶を植え付けられた作り物にほかない』

『そう』


 ずっと気になっていた。

 ゴルドに娘がいると言われて、万が一記憶が無い状態で出会ったら、何て声をかけて良いのかわからなかった。

 でも、記憶が戻り、真実を知った今、ようやく頭の中がすっきりした。


『問う。お主は娘を助けるかの?』

『当然よ。作られた記憶だろうが、殺される直前の私は娘を庇っていた。あのバケモン相手に手も足も出ないとわかっていた状態なのにね。そして今あの子……シャルドネは貴方の世界にいるのでしょう?』


 まっすぐ鉱石の神を見る。


『ああ。いる。じゃが『いない』』

『どういう事?』

『ゴルドが女神に喧嘩を売ったのは聞いたかの?』

『まあ』

『その時儂はゴルドを庇った。そして女神に『神術』をかけられたのじゃよ』

『どんな?』

『人間や精霊や神すら認識できなくなる術。認識阻害の上位の物じゃよ』


 にんしきそがいって確か気配を遮る『かみじゅつ』だっけ?


『今も?』

『今もじゃ』

『じゃあ何で私は貴方を見れるのかしら?』

『ふぉふぉ。あやつ……女神もツメが甘かったようじゃ。人間や神や精霊が認識できない術。つまり、『それ以外』がここに登場したのじゃからな』


 私に手を差し向ける鉱石の神。なるほど、私がその人間や精霊や神以外の存在ということね。


『じゃから、お主の娘を助けるついでで良い。儂の事も助けてくれんかのう?』


 記憶を失い、ミルダ大陸を歩き回ってようやく記憶を取り戻した。

 当然娘は助ける。ついでにこの鉱石の神とやらも助けてあげる。


『じゃあ、神様というなら一つお願いをして良いかしら?』

『ああ、なんじゃ?』

『さんざん連れまわして迷惑をかけてしまった仲間が一名いるのよ。力は弱いのに、何かと面倒を見てくれる優しい仲間がね。だから……』


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