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時を司る者

 ピコン


 そんな音が聞こえました。

 何か振動を調整して変換した音色。今まで見たこと無い音ですね。


「あ、サイトウ博士から連絡が来たわ」

「じゃあ行くわよ」

「……ん」

「マオ、ネクロノミコンをボクに貸してくれませんか?」

「……はい」


 ゴルドが険しい表情でマオからネクロノミコンを受け取りました。


「トスカ、おそらく一瞬で到着です。その状況に普通の人なら驚いて腰を抜かすでしょう。ですから、『心情偽装』で一時的に感情を無くさせますね」

「え、何もそこまで」

「そこまでする必要はありそうよ。だって……」


 カグヤを見ると、何やら細かい光の砂のような粒が舞い上がってました。


「これは、とんでもない『術』よトスカ。『あのゴルド』ですら何かを考えてネクロノミコンを持ったということは、『何か』あるわよ!」

「そんなことを言われても」

「行くわよ。衝撃に備えて……」


 カグヤがそういった瞬間、僕の意識が真っ白になりました。


 ☆


「……カ、トスカ! 早く『術を一時的に使えなくする音!」

「わかり……ました」


 ……。


 ピロロロロー


「なっ! 面倒ね。時間跳躍ができない?」

「上手くいったわね。ゴルド、多分もう大丈夫よ!」

「わかりました。トスカ、今『解除しますね』」


 ……。……。ん?


 今の感覚は何でしょうか。

 まるで何も感じない、ただ目の前が真っ白に輝いたにも関わらず、まったく驚きも興味も感じなかったです。

 そして、ゴルドの『解除します』と言った後、突然驚きと恐怖が襲ってきました。


「な、なにが」

「……これが『心情偽装』。そして、『ゴルドの心の中』でもある」

「ゴルドの?」


 ゴルドをじっと見ると、マリーが話しかけました。


「精霊は本来『心や感情』を持たないわ。もしワタクシが『心情偽装』を貴方にかけても、ワタクシの考えがそのまま伝わるのよ。そういう意味ではゴルドが一番適任ね」


 つまり、ゴルドの心っていつも……。


「トスカ、あまり深く考えないでください。精霊は直感で動いているだけで、楽しいときは楽しいと口に出ますよ。とりあえずトスカ、ネクロノミコンを預かってください。この本はボクにとってあまり良い思い出は無いので」

「はあ……」


 もやもやした気持ちのまま首を強く横に振り、目の前の事に集中します。


「トスカを励ます会は終わったかしら?」

「……本題はこっち」


 前を見ると、シャムロエとマオの真ん中でロープにぐるぐる巻きにされている少女の姿がありました。


「まったく、屈辱だわ。いたいけな少女にロープなんて、いつの時代の拷問よ」

「よく言うわね『時の女神クロノ』。出会った途端未来視で面倒だと判断したら過去に逃げるくせに」

「マリー? はん。わざわざリュウキュウまで来て私に会いに来たの?」


 ここはどうやら『リュウキュウ』という場所だそうです。と言ってもどこかわかりませんけどね。


「って、カグヤまでいるの? それにこの力……音? え、原初の魔力がどうしてここに集まっているのよ?」

「それほど緊急事態という事なのよ。まあ、貴女にとっては他人事だけどね」


 そしてシャムロエとマオが頭を下げました。


「ロープで動けなくしたのは悪いと思っているわ。でもお願い。私たちの記憶を戻して欲しいの」

「……そのためにここへ来た」


 シャムロエとマオの真剣な眼差しに、クロノはため息をつきました。


「はあ、とりあえずわかったわよ。でも記憶を戻すって、私にそんな力は無いわよ?」

「記憶の部分の時間を戻してほしいの。忘れた直前までのところを」

「なるほどね。忘れた日にちが明確ならば簡単よ。逃げないからその音の魔力での封印を解いてもらえるかしら?」


 ゴルドがこくりと僕に頷きました。


「わかりました」

「はあ、まさか逃げれない状況が来るなんてね。さて、正直二人の記憶がどういう物か私には興味もないのだけれど、もしそれが残酷なものだとしても恨まないで頂戴」

「わかったわ」

「……ん」


 そして、クロノが二人の頭に手を乗せて、何かを唱えました。

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