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全てを覗く少年

 青い空。白い雲。良い天気の空はミルダ大陸にいたころとあまり変わりませんね。

 違うところというと、少し視線を下げれば鉄の塊の建物が立ち並んでいることくらいですね。


「おはよーって、どうしてフーリエが縄で縛られているのよ?」

「不法侵入者を捕まえただけです」


 まあ、縄は軽く巻いているだけなので、全然緩いのですけどね。


「いつどこで何があるかわからないこの『チキュウ』という別世界で、原初の魔力を持つ二人だけでは心配だと思ったのです!」

「あら、それならワタクシも原初の魔力を持っているから、フーリエに守ってもらわないと」


 そうマリーが意地悪に言うと、てくてくとマオのところへ歩いていきました。


「マオ様、ネクロノミコンを貸してください。ワタチを増やします」

「……息を吸う感覚で自分を増やすの良く無い。自分をいたわるの大事」

「ぐう!」


 しっかりとネクロノミコンを隠すように持つフーリエ。それを見てマリーが少し悲し気な目をしました。


「まさか、『また』その本と出合うなんてね」

「この本のことを知っているのですか?」

「ええ。これはこの世界のとある魔術師が作った本よ。そしてワタクシが貴方たちの世界とこの世界を行き来した際に使った本ね」

「行き来。つまりマリーはこのチキュウ出身なのですか?」

「そうよ。友人がこの本を使ってしまい別の世界へ飛ばされて、小さな村に落ちたの。言葉も通じないのに色々とお世話をしてくれた『タプル』という村長には感謝しているわ」


 え、タプル?


「あの、僕の生まれた村はタプル村というのですが、それと関係しているのでしょうか?」

「ああ。もしかしたらその人の名前が村の名前になったのかもしれないわね。『あいつ』の話だと、ガラン王国とかゲイルド魔術国家とかあるのでしょう? ワタクシが行った時はそもそも国という存在はなく、代表者くらいしかいなかったわね。ガランもゲイルドもそこでは一番権力を持っていた人の名前ね」


 そんな歴史があったなんて初めて知りましたよ。


「ふっふっふー、それはワタチも知っているのです。ミルダ大陸の名前の由来であるミルダも、静寂の鈴の巫女の名前から取ったもので、人の名前が地名になるのが一つの伝統となっています」

「……つまり、パムレットも人の名前で、超偉大な人物が!」


 マオが目を輝かせてマリーを見ました。


「え、ぱ、ぱむれっと?」

「あー、あれはガラン王国で作られたもので……由来はワタチも知りません。少なくとも人の名前ではないような」


「……時に言葉は希望を生み出し、そして絶望も生み出す。光の先は希望とは限らないということを今身をもって知った」


 よしよしと撫でるシャムロエ。そんなに悲劇的なことでしょうか。


「ん?」


 と、そんな話をしていると、扉の外から音が聞こえました。いや、小さすぎてもはや耳には入らず、目でようやく見えたという感じでした。


「あ、来たみたいね。入ってきなさいよ『キョウカ』」


 そう言って、ゆっくりと扉が開きました。


 黒い髪に白い肌。そして目の周りはクマがあり、見た感じ少し不気味な雰囲気を醸し出しています。僕と同じくらいの年齢の男性ですね。


『みつ……けた。光……追うの……大変』


 シャムロエが首をかしげました。


「トスカ、あの人の言葉は『ニホンゴ』。マリーとマオとトスカは理解できる」

「だからところどころ途切れているのですか? 言語を理解するのは慣れそうにないですね」

「ああ、キョウカは元々そんな感じよ。そしてトスカ達のことは彼が『見ていた』の」


 見ていた?


「どういう意味かしら?」

『ぼ、僕は……ここから……遠くを……覗ける。異世界……も、見れる』

「トスカ、何て?」

「えっと、ここにいながら遠くを見ることができるそうです。それが別の世界でも彼は見ることができるそうです」

「それってすごいわね。原初の魔力かしら?」


 シャムロエの質問にキョウカはおどおどしました。ああ、言葉が通じないのですよね。


「違うわよ。トスカ。言葉もそうだけど、基本キョウカは人見知りなの。特に『かわいい女の子』には照れて直視できないわよ」

「え?」



「トスカ、何で今『え?』って言ったのかしら? その意味は何?」



 腕をぶんぶん回して僕に近づいてきました。違いますよ! 決してマリーの言葉に違和感を感じたわけではありませんから、そんな怖い顔して近づいて来ないでください!


『物だけじゃ……無い。その中のもの全て……君はトスカ……音を……操れる』

「今を見る以外に、名前や能力も見れるのですか。凄いですね」

「ええ。だから普通の人間は『心情読破』をキョウカに使うと、大変なことになるわよ」

「大変なこと?」


 どういう状況になるのでしょうか?


「……あまりの情報量の多さに、気を失う。いや、失うだけで済めば良い」

「マオは大丈夫なのですか?」

「……マオは特別。ちなみにマリーとゴルドは特殊」


 原初の魔力を持っているマリーとゴルドは違うのでしょうか。ゴルドはそもそも精霊ですしね。


『その……点、光……の所持者……は、覗きにくい。光……は粒子……目で追う……のは難しい』


 というキョウカの言葉を通訳しました。とりあえずその『光』の原初の魔力の所持者と会って……会って……。


「光の所持者と会って何をお願いするのですか?」


 まさかその『女神』という神と戦うため、勧誘するのでしょうか?


「協力者になってもらうのはおまけ。本当の目的は……」


 僕たちは唾を飲みました。



「ワタクシ個人的な理由よ」

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