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初代魔術研究所館長「マリー」

 ゲイルド魔術国家の魔術研究所の創設者にして初代館長のマリー。確かフーリエが以前そんな説明をしてくれた気がします。

 その紫色の髪は誰が見ても二度見するほど印象が大きく、きりっとした目はどこかシャムロエに似ています。

 魔術研究所が作られてからミルダ大陸の魔術は各段に進歩し、魔術を使った木の栽培や作物の採取などは革命だったそうです。


「知り合いからゴルド達がこの辺に来ることを教えてもらったのだけど、『認識阻害』を使われていたから時間がかかったわ」

「いやいや! どうしてマリーが『生きている』んですか!」


 ……は!

 そういえばそうでした!

 ミズハから言われていましたが、答えは教えてもらっていません!


「ん? 秘密くらいいくつもある物よ。今言えるのは、ワタクシは普通より長生きなのよ」

「まあ、そういうことにしておきます。あ、皆さんに紹介しますね」


 そう言って、ゴルドはマリーを紹介してくれました。


「何かで話したと思いますが、彼女がマリーです。初代魔術研究所の館長で、フーリエの元上司ですね」

「まさかフーリエまで来るとは思わなかったわ。始めまして。ワタクシがマリーよ」

「トスカです」

「……マオ」

「シャムロエよ」

「え!?」


 マリーが突然反応しました。


「シャムロエって、『あの』?」

「そうです。『あの』シャムロエです」

「私のことを知っているの?」


 シャムロエが質問をしました。


「え、ええ。ただし名前だけよ。その、ワタクシも『そっちの世界』に行った事があって……」

「あって?」

「その、『貴女は死んでいたわ』」


 マリーの言葉に周囲が凍りつきました。


「その、シャムロエ」

「トスカ、大丈夫。転生している時点で死んでいることはわかっているから。マリー、悪いんだけど続けて話してもらえる?」

「ええ。ワタクシが転移したとき、貴女は娘を庇って死んだの。偶然居合わせたワタクシと、一緒に転移した人間がその敵を退治したんだけど……ごめんなさい。生きている貴女と会ったのは今日が初めてよ」

「そう……ありがとう。話してくれて」


 そしてシャムロエはゴルドが土で作った椅子に座りました。


「話が終わったのでしたらマリー、ちょっと質問があるのですが」

「ああ、ゴルド。悪いんだけどもう少しだけ待ってもらえる?」

「え?」


 うん。僕ももう少し待ってもらって良いかなと思いました。


 だって、僕の背中に隠れている小さな悪魔が服の裾を掴んでずっと震えているのですもの。


「はあ、久しぶりねフーリエ。元気だったかしら?」



「ああああああああああああ! まりーさまあああああああああああああ!」



 その声はとても大きく、しかし喜びにあふれた声に見えました。


 ☆


 紫色の髪のマリー。初代魔術研究所の館長にして、フーリエの元上司。その容姿は凄く整っていて、綺麗な人という感じでしょうか。

 シャムロエは格好良い女性、マオとフーリエは幼い女の子という印象があるので、緊張します。


「あら、うれしいわね。でもワタクシはかなり年上……そうね、フーリエより年上よ?」


 そして問答無用で心を読むので、僕は考えるのを止めました。別世界でも僕の心に自由は無いみたいです。


「冷め方の落差が凄いわね。え、ゴルド、このトスカという少年も心を失っているのかしら?」

「いえ、ただ心を読まれることに対してかなりの苦手意識があります」

「誰だって心を読まれるのは嫌ですよ!」


 そういえばマリーは簡単にゴルドの心を読むって言ってましたね。なんだか魔術師全体が信じられない状態です。


「うふふ、まあこの世界で魔術師という分類の人はワタクシ含めて数名しかいないから安心しなさい」

「そうなのですか?」

「ええ。その辺も含めてお話しましょう。さあ、ここが私の拠点よ」


 ☆


 お茶を出され、少し安心しました。

 とはいえ、いつ襲われるか分からない現状、気を抜くことはできませんよね。


「それは安心しなさい。今は戦時中だけど、『兵器』が来ない限り安全よ」

「へいき?」

「……外には人が沢山いるのに、マリーは落ち着いている。さっきはマオたち襲われた」

「そうね。貴方達が突然現れたからテロ……あー、襲撃者だと思われたのかもね」

「襲撃者……」


 なるほど。そう言われれば僕ももし突然目の前に何かが現れたら驚きますね。



 そう言ってシャムロエとマオを見ました。



 うん。初めて出会ったときは驚きましたよ。


「何よ」

「……ん?」

「何でもありません。それよりここって『チキュウ』ですよね?」

「そうよ?」

「それにしてはシャムロエもフーリエも普通に話している気がするのですが……」


 先ほど襲われたときは、とっさに相手の言葉が理解できました。ですが、所々違和感がありました。

 マリーの言葉はそれに比べてとても聞き取りやすいです。


「ああ、だって『貴方達の世界の言葉』で話しているからよ。千年振りだから所々忘れているけど」

「なるどほ。気遣いありがとうございます」


「……だからマオはいつも通り術を使って理解と発声をしている」


「気がつかなくてすみません。あとでご褒美あげますね」


 ですよね! マオの地元ってここですから、普通なら最初の『……』は無いはずですよね!


「さて、実のところ貴方たちの目的はおおよそ把握しているつもりよ。『原初の魔力』でしょ?」

「どうしてそれを?」

「とある情報筋……と言っても、そこのお嬢さんにはワタクシの心を読まれてバレタみたいね。実はここからそちらの世界を覗ける人がこの建物に住んでいるのよ」

「……別の世界を覗ける存在……」

「そう。それで、今はその『原初の魔力』に関する人や物を探してもらっているわ」

「その人に会うことは?」

「今は控えて欲しいの。その人は凄い人見知りだから」


 他の世界を覗ける人。そんな人物がこの世界に居るとは思いませんでした。


「本当はもう一人紹介したい人がいるんだけど、ちょっと留守にしているのよね」

「もう一人?」


 マリーはマオを見つめました。


「お嬢さんのお父さん……のような人物よ」


「……マオの?」


 それは驚きました。そこまで話が通っていると、後は記憶を取り戻すだけですね。


「そう。問題はその記憶よ。本当なら乙姫……いえ、ミズハの『タマテバコ』で記憶を取り戻すはずだったけど失敗したでしょ?」

「はい」

「『原初の魔力』の『時間』を宿す女神は気まぐれなの。だからマオの父親には先にそっちへ向かってもらったわ」

「時の女神クロノの場所へ?」

「そう。説得が上手く行けば良いけどね」

「では、その間僕達は何を?」


「『原初の魔力』の『光』の所持者に会いに行くのよ」

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