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新天地「チキュウ」

 転移というのはこの世界で何人が経験するものなのだろう。

 マオは記憶を失ったとはいえ、経験者ではあります。

 そういえばゴルドの知り合いも転移して帰ったと言いましたね。そう考えると結構転移者って多いのかもしれませんね。

 感覚としては夢を見ている感じでしょうか。白い空間で、フワフワと体が浮いている感じです。

 いや、もしかしたらもの凄く早く移動していて、周囲の景色が見えないのかもしれませんね。


 そんなことを考えていると、ほんの一瞬ですが『何か』が見えました。


 金髪の少女が手足を縛られて、髪の長い女性に何かをされている光景でした。


 ほんの一瞬の出来事でした。

 馬車よりも速い速度でその横を過ぎ去ろうとしていました。

 本来ならその速度なら見逃すほどの速さです。


 ですが、はっきりと金髪の少女……シャムロエに似た少女でした。

` その少女は僕と目が合いました。一瞬のはずなのに、その時だけ時間が止まったように思いました。

 そしてその少女は微笑みました。僕をしっかりと見て、そして声は聞こえませんでしたが、口元がこう動きました。


『まだ大丈夫』


 まるで夢の中の世界の出来事に、僕はまた意識が飛んで……。


 ☆


「起きなさいトスカ!」

「がは!」


 思いっきり腹部を殴られました。


「はあ、やっと起きたわゴルド!」

「上出来です! 次はマオを起こしてください。早くこの場から……『投石』!」

「ゴルド様、後ろから三人! 右から五人新たに来ます!」

「ほーら、マオー。おきなさーい。パムレットよー」

「……ん、おはよ」


 この起こし方の差は何ですか!

 と言うか、ゴルドは魔術を放ってませんか!


「トスカ! この際『これは魔術ではなく精霊術です』という突っ込みは後にします。まずは攻撃を受けているので安全な場所へ逃げますよ!」

「攻撃? 何故!」

「わかりません! ただ、一つ言えるのは、相手は人間なのに、強力な武器を持っています!」


 パン!


 そんな音が聞こえました。


 キインという音が近くの壁で聞こえ、そこには穴が開いています。


「って、これは何ですか!」

「わかりません! ただ一つ言えるのは、ここは危険です!」

「煙幕を張ります! 『悪夢の濃霧』!」


 フーリエの手から煙のような物が出てきました。


『何だあれは!』

『怯むな! 突然光りだして中に人がいたんだ。敵国の新兵器だろう!』

『しかし、う、うわああああ!』


 霧に飲み込まれた人は次々と悲鳴をあげました。


「幻覚を見せるだけですので、すぐに追ってきます! 早く!」

「はい!」


 そしてその場から急いで僕達は逃げ出した。


 ☆


「『土壁』と『認識阻害』。これで何とか大丈夫でしょうか」


 山奥へ逃げ、ゴルドが簡易的な小屋を土で作ってくれました。


「ありがとうございます」

「いえ、それよりもこの世界が……」


 岩……いや、鉄で作られた建物に、無数の硝子。そしてよく分からない素材で作られた看板。これがマオの世界なのでしょうか。


「あはは、ずいぶんと個性的な建物ですね。あそこの建物は半分穴が空いてますよ」

「どうみても攻撃を受けた跡ですよ。煙も出ていますよ」

「ここの文化かもしれませんよ?」

「現実を受け止めましょう? トスカ」


 うぐ。それを言われると何も言えません。


「……間違いない。さっきの人間は『ニホンゴ』を話していた。ここはマオの世界」

「そうなると、目的の世界にはたどり着いたということですね」


 まずはひと段落と言ったところでしょう。

 しかし、ここから先、クロノの手がかりをどうやって見つければ良いのかわかりませんね。


「え、考えが無かったのですか!」

「まさか来た瞬間襲撃を受けるとは。それに、こんな見たこともない世界とは予想していなかったので、勝手がわからないのです」


 鉄だらけの世界。所々光っている物体。火とは異なる輝き方から察するに技術が凄く進歩している様にも思えます。


「『空腹の小悪魔』に周囲を探索してもらいましたが、どこも武装した人間ばかりです。一体何があったのでしょう」

「さあ、別世界の事情なんて私達に知ったことでは無いわ。でも巻き込まれるのだけは簡便ね」


 シャムロエがため息をつきました。


「でも、ずっとここで野宿をする暇も無いし、何か対策をしないと」

「っ! 待ってください。何かが近づいています!」


 小さな音。

 僕にしか聞こえない足音がこちらに迫っていました。


(何かって何よ)

(分かりません。ただ、『認識阻害』を使っている感じです)

(マオ、このチキュウでも魔術の概念はあるのですか?)

(……分からない。ただ、マオが使えるから、概念はあると仮定できる)

(ならば、先手必勝で行きます!)


 そしてゴルドは飛び出しました。


「『投石』!」

「『火球』!」


 ぱあああん。


 ゴルドの放った術が何かに防がれました。何か術の名前を言ったようにも聞こえました。


「千年経って、ワタクシのことを忘れたのかしら?」

「あ……貴女は……」


 ゴルドの声が震えました。そして同時にフーリエが立ち上がりました。


「ま、マリー様!?」

「ええ、久しぶりね。鉱石精霊さん。そしてフーリエ」

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