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ノームの行進

「足元気をつけるんじぇ」

「高さは大丈夫かんぼ?」

「息が苦しくなったら言ってんじぇ」


 僕達は今、ノームの案内に従って地下の道を歩いていました。

 フーリエ(海の地担当)とは別れ、今は僕とシャムロエとマオとノームたちという状態です。


「不思議と歩くたびに力がわいてくるのだけれど、ノームの気使いかしら? 道に細工でもしてあるのかしら?」

「んじぇ? それはシャムロエ殿の体内に鉱石精霊の魔力が宿っているから、活性化しているだけんじぇ。逆にトスカ殿とマオ殿は凄く疲れているんぼ」

「体が重いと言いますか、呼吸が辛いですね。歩けないわけではないですが」

「……右に同じ。少しクラクラする」

「んぼ。もう少しで休憩できる広い場所を作っているんぼ」

「助かります」


 地下を歩くなんて経験は普通ありませんからね。鉱山とか山の洞穴とは話が違います。


「ここんじぇ。と言っても少し広いだけんぼ」

「いえ、十分な広さです」


 所々に広い場所が用意されて、到着する度に休憩をしていました。人間にとって地下通路はあまり環境的に適していないらしく、主に呼吸が苦しくなるとか。


「海の底だから十分な空気穴を準備できなかったんじぇ。許してほしいんぼ」

「いえ、通路を準備してくれるだけでも助かります」


 フーリエから貰った井戸水を飲み一呼吸。マオも隣で水を飲んで「ふぅー」と目を細めています。


「ん?」

「……どうしたの?」

「いえ、マオから最初の『……』という無言が無い発言は珍しいなーと思いまして」

「……ため息に『言語変換』は必要無い」


 今更ですがマオはいつも術を使って僕たちが理解できる言葉に変換して意思疎通をしているのですよね。

 いつも魔力を消費して疲れないのでしょうか?


「……気遣いは嬉しい。でも大丈夫。あまり疲れない」

「そうなのね。でも無理はしないでよ?」


 反対側の隣に座っていたシャムロエが頭を撫でました。やっぱりこの二人は仲良しですね。


「ちなみにここが最後の休憩場所んじぇ。あとは目的地だんぼ」

「想像以上に長かったわね。まあ景色が見えないからそう思えただけかもしれないけど」

「……音楽が欲しかった。無音をひたすら歩くのは辛い」

「洞窟内で演奏すると音が反響しすぎて、音の所為で前が見えなくなるのですよね」

「やっぱりこの『音が見える』という表現になかなかの違和感と言うか、私には無い感覚ね」

「そうですね。凄く近い表現として焚き火の煙とかですね。音によってはモクモクと上に上がっていくので、触れると途切れたり遠くに行ったりするので」

「……なんとなく理解。マオの場合『心情読破』で少し理解していたけど、今ので少しすっきり」


 心情読破を遮断する術……『心情遮断』とか存在しませんかね。いや、確か思っていることを無理やり変える『心情偽装』というのがあるんでしたっけ。


「さて、僕は少し落ち着きました。マオは大丈夫ですか?」

「……ん、目的地が近いと聞いて元気が出た」

「単純ね。でもそういうところは良いところね。うりうり」

「……しゃふほへ。ほっへをふにふにしない」

「やばいわね。癖になるわねこれ」


 そんなほほえましい光景を見て、ほっこりしている中、ノームの視線はなんと言うか、凄く冷たいものでした。


「あ、す、すみません。待たせてしまって」

「いや、それはいいんじぇ。ただ、人間同士の交流ってオイラたちには理解できないんじぇ。顔を触って笑っているシャムロエ殿を見て何が良いのかわからないだけんじぇ」

「ちなみにノーム同士の交流ってどんなのですか?」

「んじぇ。じゃあ実演するんじぇ」


 そう言って周囲を警戒していたノームを一体呼び、耳打ちしました。内容は『仲が良いときにお互いすること』って聞こえました。


「んじぇえええああああああ」

「んじょじょじょじょじょじょ」

「ぼぼぼぼぼぼ!」

「ばーっぼぼぼぼ!」


 普段穏やかなノームとは思えない『叫び』が聞こえ、僕はただ呆然とすることしかできませんでした。

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