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名もなき港町『海の地』

 ガラン王の粋な計らいで南の地方、海の地へは馬車で行くことになりました。

 シャムロエはその生まれもって得た肉体で、歩くことにぜんぜん疲れを感じず、マオは魔術を使って時々少し浮いているので疲れないとか。


「理不尽ですよね」

「まあまあ、でも全く疲れないわけでもないし、歩くよりも早く海の地へ行けそうだから良いじゃない」

「……考えすぎ。ちなみにマオは今も少し浮いている」

「何故ですか?」


 せっかくの馬車なのに、浮いているということは馬車と一緒に進んでいるということでしょうか?


「……馬車の揺れはマオの脳に膨大な負担をかける」

「つまり酔ったのね」

「……ん」

「あとで休憩も取りましょ。馬も水をあげないといけないのでしょ?」


 シャムロエがそういうと、馬車の持ち主が『おうよ!』と元気良く答えました。


「でも、トスカは言いの? タプル村に寄らなくて」

「ええ。一度行きましたし、ノーム達の状況もわからないので、できる限り早く行ってお手伝いできるならお手伝いしたいです」

「……トスカはやさしい。マオ賛成」

「そうね。洞窟作りよね? 私が殴れば一瞬で」

「洞窟が壊れるので止めてください」

「そこまで強くない……わよ?」


 一瞬止まりましたね?


 ☆


「さあ、兄ちゃん。ここが海の地の港だ」

「へえー。僕は地理に詳しくないのですが、どうしてここだけ『海の地』と昔の名前が使われているのですか?」


 かつてミルダ大陸はガラン王国は『草の地』、ミッドガルフ貿易国は『岩の地』、ゲイルド魔術国家は『雪の地』と呼ばれていました。それぞれを『昔の名前』と呼び、今では殆ど使われていません。


「国がある場所は名前があるーなんて聞いたことがあるな。ここを統括する人もいるが、あくまで他の国とやりとりをする人という立場ってだけで、国ではないらしい」

「なるほど。教えてくださりありがとうございます」


 国ではない。と言いつつも凄く栄えていますね。

 船着場の近くは海産物を扱っている店が活気を生み出し、少し離れれば砂浜が見え、遊んでいる人たちもいますね。


「……まさか……海のパムレットも!」


 なんておかしなことを言う少女も出てくるでしょう。というか考える前に出てきていましたね。


「トスカ様ー。シャムロエ様ー。マオ様ー」


 毎度ながら布で覆われた怪しい人物が現れました。どこに行ってもその姿は変わらないのですね。


「待たせたわねこっちのフーリエ。というかその服装は暑く無いの?」

「ワタチは全フーリエと記憶や体感が共有されているので、この地に五人くらい住めば少し薄着になりますが、ここにはワタチしか居ないので、平均を取るとこの服装になるのです」


 なるほど。つまりあの氷の中って相当冷たいのですね。ちょっと労わってあげたいなーなんて思いましたが、騒動に巻き込まれているので少し躊躇ってしまいます。


「ノームとは接触できました。(若干距離を取られましたが)場所は分かったので、トスカ様を見つけ次第お連れするように約束しました」


 ボソッと小さい声で悲しげな声が『見えました』ね。そういえばフーリエって悪魔ですし、ノームは精霊。つまりフーリエの大好物の魔力ということでノームも警戒してしまったのでしょう。


「……過去にノームと交流があったのでは?」

「がっ!」


 子供の純粋な言葉は時に突き刺さるのですよ。マオさんやい。


 ☆


「ということで、『寒がり店主の休憩所~海の地店』へようこそ!」

「完全に店の店主状態ね。というかすぐに出発するんだし、別に泊まる必要は無いのでは?」

「そんな! せっかく来たのですから!」

「……ちなみに、一つ重要な質問をする」

「何ですか?」


 沈黙が生まれました。と言っても、僕はなんとなく察したと言いますか、心を読む『心情読破』を使わなくてもわかりますよ。


「……ここの地域限定パムレットはあるの?」

「無いですよ?」

「……トスカ。出発しよう。ここにはもう用が無い。たとえ空から大きな岩が降っても問題ない」

「酷いですね!」


 ことパムレットのことになると答えがゼロか一しかないマオには色々な意味で関心しますよ。


「ですが、ここにはパムレット以外の食べ物があります」

「……む? 少し気になる」

「ふっふっふ、それがこの『寒がり店主の休憩所』限定お菓子、『カキ氷』です!」


 そう言われて出されたのが、氷を細かく刻んだ白い山に赤いシロップがかけられているものでした。


「……こお……り?」

「この地域では魔力が極端に少ないのですが、ワタチは様々な方法で魔力を供給できるので、水を冷やして氷を作り出して、この『カキ氷』を作ったのです!」

「初めて見る食べ物ね。フーリエが考えたの?」

「いえ、かつてガラン王国が草の地と呼ばれていた時代に住んでいた方から、氷を細かく刻んで甘いシロップをかけて食べたーというお話を聞いたので、見よう見まねです」

「……ことお菓子については厳しいマオが判定をする」


 そしてマオは一口。小さな口に刻まれた氷菓子の『カキ氷』を入れました。


 シャリっと良い音を立てた瞬間、マオの目はキラキラと輝きました。


「……合格」

「判定緩くないですか? もはや甘いお菓子なら何でも良いと思いはじめましたよ」

「……そんなことは無い。強いて言えばトスカの作った黒こげのパムレは不合格」


 試作段階時に一つ黒く焦がしたパムレを作ってしまい、捨てようと思ったらマオが勝手に食べちゃったんですよね。

 勝手に食べられて合否を付けられてしまいました。


「……空から大岩が降って来ても守る事を約束する」

「わーいです」


 ため息をつき、僕も一口。そしてシャムロエも一口。その味は確かに美味しく、そしてその手は止まらずやがて全員が同じ発言をするのでした。


「「「(……)頭が痛い」」」

「あ、一気に食べるとそうなるので気をつけてください」

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