☆次なる目的地『リュウグウジョウ』
ノームとの約束についてフーリエにも少しお話しておいた方が良いでしょうか?
そう思い、今ノームが『リュウグウジョウ』まで道を作ってくれていることを伝えました。
「なるほど、ノームたちの協力で『リュウグウジョウ』まで道を作ってくれるのですね。それは助かりました」
「そういえばフーリエの方で何か準備をしていたのですか? だとしたら準備が無駄になってしまいますね」
「いえ。むしろワタチや皆様の負担が減ります」
「負担?」
僕含め三人は頭に疑問を浮かべました。
「『リュウグウジョウ』は海底にあります。海の地から目的地まではワタチの魔力で空気の膜を作って海底をあるくのです」
「へえ。ノームの道って多分地下でしょ? 海の底を歩いた方が綺麗で楽しそうじゃない?」
「ですが、空気の膜の魔術はとても繊細なので、魚が一匹でもぶつかると割れます」
割れますってあっさり言いましたが、それってつまり。
「……人間は生身で海底に行くとぺしゃんこになり、やが」
「マオー、それ以上は分かりましたから言わないでください。というか何でそんな知識は知っているのに、自分の年齢は知らないのですか!」
「……魔術研究所の本に載ってただけ。勉強は好き」
普段からシャムロエの膝に乗ったり頭を撫でられているため、頭が良いということとは無縁だと思っていました。
「……トスカは後でパムレットの刑に処す。パムレットの父ならありがたい刑だと思われる」
「いやですよ! それこそ変な目で見られます! 謝りますから機嫌を直してください」
あ、マオが何かを唱えました。これはまずいです。
「シャムロエからも何か言ってください。後でお礼に何かしますから」
「そういわれてもねー」
苦笑するシャムロエ。完全に我関与せずという感じですね。とりあえず口笛を鳴らしました。
「うー、若干気になっていた目の痛みが無くなったからマオのご機嫌取りをするわ……一つ貸しよ」
そしてシャムロエは膝をポンポンと叩き、マオを呼び名で始めました。
本当に仲が良いというかなんというか。
貸しを作る前に行動しましたが、貸しが増えてしまいました。まあパムレットの刑よりはマシでしょう。
「あはは、やっぱり皆様は面白い方々です。最初に出会ってワタチの勘が当たって良かったのです」
「勘?」
「はい。ワタチは普段『寒がり店主の休憩所』の店主として行動しており、『魔術研究所』の館長、つまりフーリエという名は隠しています。しかし、トスカ様達は何か感じるものがあったので、最初に名乗らせていただきました」
そこから愉快な記憶を探す旅から各国の問題解決の旅へと変わったわけですね。
「まあ、勘と言っても殆どは確信に近いモノでした。一人は膨大な魔力の持ち主。もう一人は精霊の魔力を宿していましたからね」
「知った上で話したのですね。これはもう確信犯ですね」
「あはは、だからトスカ様達は特別に宿代を無料にしたのです。いつかゴルド様に会わせてくれるかもしれない存在。そして何かを成し遂げる存在と思いましたから」
なにやら背中がかゆくなってきますね。照れと言いますか、なんとも言いがたいです。
「こ、こほん。では土の精霊の協力があるのでしたら問題ないでしょう。ワタチもあの精霊とは知り合いですし、海の地の港町にいるワタチに捜索してもらって話をしておきますよ」
「助かります。では用事も済みましたし、そろそろ出発の準備をしますか」
そう言って、僕達はようやく二人の記憶が見つかるかも知れない、海の地『リュウグウジョウ』へ向かうことになりました。