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心情読破と心情偽装

『悪魔』という存在は多種多様で、僕の知る限りでは良い存在とは言えないです。

 だって悪魔ですからね。


「……悪魔契約をするとどうなるの?」


 マオがフーリエへ問いかけました。


「『悪魔契約』は『悪魔召喚者』と『悪魔契約者』がいることで成り立つ召喚術です。本来悪魔を召喚できる人は限られていますが、契約者は誰でもなれます。そして契約すれば人間離れの力を得ることができるのです」


 一見魅力的な提案だとは思います。人間離れの力というのは誰しもが憧れるものですよね。

 でも、もちろん欠点も存在するのですよね?


「契約したら力を得る以外に何かあるのかしら?」

「はい。寿命が短くなる。大切な人を失う。他にも色々ありますが、これら条件は召喚された悪魔によって提示されます」

「大切な人を失ってまで得る力に価値なんてあるのかしらね?」


 シャムロエの素直な感想にフーリエは微笑みました。


「そうですね。普通はありえないです……普通は」


 遠い目をしたフーリエ。モコモコ状態の服装なので目しか見えませんが、その目は少し遠くを見ているように感じました。


「まあ良いわ。その『悪魔契約』とやらが流行っているせいで私の腰痛も酷いのでしょう? なら悪魔契約をした人から事情を聞き出せれば良いんじゃ無いかしら?」

「そうですね。あの髭の兵士が一番怪しいので、あの人を捕まえることができればなんとかなるかもしれません」

「どうすればあの兵士をおびき出せるかしら?」


 シャムロエが考えると、マオが右手を挙げて提案をしました。


「……もう一度演奏すれば良い」

「嫌よ」


 即答ですね!


「……マオ、結構楽しかった」

「私は心苦しかったわよ! ボロボロの椅子を叩く役はもうゴメンよ!」

「ボロっ!」


 ああ、フーリエまでショックを受けています。被害がまるで音のように広がっていますね。


「ま、まあまあ。ボロボロかは置いといて、アレはアレで様になっていましたよ?」

「何がよ! 力の基準が分からなかったから普通に椅子を持ち上げたけど、あの椅子ってトスカも持ち上げるのに苦労する重さなんでしょ!」


 バレましたか。

 実際シャムロエが叩いていた椅子はとても重いです。両手で持っても数歩歩ける程度で、それを軽々と持ち上げたシャムロエは素直に凄いと思いました。

 まあ、女の子の気持ちを考えれば嫌だとは思いますけどね。


「……いっそのことボロボロの椅子を二つ持ち上げて町を歩けば良い。音は出ない。お金は稼げる」

「髭の兵士をおびき出す作戦ですよ? お金稼ぎが第一ではありません」

「もし可決してもやらないわよ!」

「ぼ……ボロ……」


 フーリエが涙を流しています。もうこの話題止めませんか!


「……パムレット食べたい」

「とうとう本音が出たわね! 真剣に話を聞いていたと思ったら、実は目的は逆で『髭の兵士を来させない為にはどうすれば良いか』とでも考えていたのでしょう!」

「……む、シャムロエ。凄い。『心情読破』でも使った?」

「何よそれ!」


 わーわー言い合う二人。まるで姉妹喧嘩ですね。でも『心情読破』とは一体なんでしょう?


「マオ、その『心情読破』とは何ですか?」

「……心を覗く術。例えばトスカ、『今フーリエの格好を見てどう思ってる?』」


 え、どうって……モコモコで暑くないのかなーとしか思っていませんが。


「……フーリエ、トスカがモコモコで暑くないのか疑問に思ってる」

「ボロボロだと涼しいのです……どうせ宿はボロボロなのです」


 フーリエが自分の世界に入りつつも返答しています。というか僕は声に出していないのにマオが質問しましたけど……。もしかしてこれも読まれているのでしょうか?


「……そう。今考えている内容も覗いている」

「だから『眠れる森の腰痛治療』という題名も知っていたのですね!」


 やっと理解しました!

 そして重大な事に気がつきました!


 変な想像ができないじゃないですか! しませんけど!


「……大丈夫。マオ気にしない」

「僕は気にするのですよ!」

「……ちなみにシャムロエはいつも鍛える事しか考えていない」

「なっ!」

「フーリエは……どうしてか読むことができない」

「ボロボロなので」


 いや、フーリエ、答えになってませんよ。


 というか、そういう術名って記憶が無いのに何故分かるのでしょうか?


「……なぜか頭には術の名前が浮かんでくる。『火球』『アイス・ニードル』『魔力反射』その他もろもろ」

「口に出さなくても質問に答えられるのは良いことだと思いませんからね! フーリエはどうやってマオの『心情読破』を防いでいるのですか?」

「ワタチは心を読む神術の『心情読破』を阻害する特別な術を使っているので読むことはできません」

「……心を偽る『心情偽装』?」

「その様な術ですね」

「……読まれたくない過去でもある?」

「ワタチの過去はミルダ大陸よりも壮大なのですよ。……そう、壮大なのですよ」


 だから先ほどからその遠い目は何なのですか!

 突っ込み待ちですか!


「……事情があるなら読まない。トスカで我慢する」

「僕で我慢しないでください。パムレット買いませんよ?」


「……!」


 マオの今後の教育?方針が決まりました。


「ぱ、パムレットを人質に取るなんて……」

「人は何か対価を得るためにはそれ相応の働きをしなければなりません。ですが、ちょうど良い案が出ましたね。その『心情読破』を使って調査をしましょう」

「と言うと?」


 僕の提案にマオは青ざめました。まあそうですよね。でも安心してください。髭の兵士から奪われる寸前で銀貨二枚は抜き取っていたので、パムレット一つは買えるのですよ。



「城下町の人たちの心を片っ端から読んで行きましょう。髭の兵士をおびき出すのではなく、探し出せば騒ぎも起こさず済みますよね?」

 心を読む『心情読破』、心を偽る『心情偽装』。皆様はどちらが使えたら良いでしょうか?

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