ガラン王国危機救出会議
「さすがに二回目は慣れがパムレットね」
「ぜんぜん駄目ですね。今落ち着かせる音楽でも奏でますよ」
「パム……こほん。ありがとう」
これ以上パムレット関連の緊急事態をマオの前で話さないで欲しいですね。このままではシャムロエがパムレット以外言葉を発せ無くなってしまいます。
「ふう、少し楽になったわ。えっと、パムレットが売れないだっけ?」
「そうだ。ミッドガルフ貿易国のパムレット。そして一度だけゲイルド魔術国家のパムレットを仕入れたのだが、店は大行列。一方元祖パムレットは余ってしまっている。他国の物資が民によって喜ばれることは国同士の関係を表しており良いことではあるが、一方でパムレットを扱う店は経営困難になる」
「……難しい。簡単な説明求む」
マオが真顔で答えました。いや、別にマオに向けて話したわけではないのですよ?
「……トスカ。パムレットはマオの生きがい。故に今回の事件はパムレット愛好家として見過ごせない」
「自称ですよね! 確かに各国のパムレットを食べましたが、それだけで愛好家を名乗られても!」
「なんと……この小さき魔術師が各国の……」
ガラン王がマオの手を掴みました。
「どうか我が国を助けて欲しい。元祖パムレットに更なる息吹を!」
「……最善は尽くす。あとは……ガラン王国次第」
何勝手に結託しているのですか!
☆
城を出て早速商店街を歩き、食材探しです。
と言っても、まだ作物は育っていないので品薄ではありますが、今作れるものを考案するしかないですね。
「それにしてもガラン王、変わったわね」
シャムロエがマオを見つつ、僕に話しかけました。
「今までは隣に悪い悪魔……のような人が居ましたからね」
「そうね。結果的に悪魔になったけれども」
「きっとまだ生きてはいるのでしょう。インプの悪魔化ももしかしたら関係しているかもしれませんし」
「その時はまたぶっ飛ばすだけね」
相変わらず考えるよりも先に拳が飛ぶ発想のシャムロエに、ちょっと安心すらします。
「……トスカ! 大変な事実!」
「何でしょう」
マオが店の前で大声を出しました。
「……パムレットの作り方を知らない!」
「本末転倒じゃないですか!」
「……そもそもあのフワフワな生地は何をどうすれば良いのかわからない」
「困りましたね。シャムロエは知っていますか?」
「少なくとも私は貴方と一緒に行動していて、その間に内緒でパムレットを作っていない限りは知らないわよ」
そうですよね。転生したばかりですものね!
でもほら、初代女王? だったわけですし、パムレットの作り方だけでも思い出したりしていないかなーと期待したわけですよ。
「……そもそもパムレットの歴史はシャムロエの転生前の時代より相当後。記憶が蘇ってもパムレットはまだ生まれていない」
「そうなのですね」
さりげなく心を読んで話すマオへ自然に話しかける僕も相当慣れてしまったのですね。僕の自由な思考はすでに消えてしまいました。
「ともかく、パムレットの作り方を知ってそうな人は……」
と
突然、不気味な気配を感じました。
「お客様、もしかしてお困りですか?」
「あ、フーリエ、ちょうど良かったです」
一番最初に出会ったときを思い出しますね。あの時は結構怖かったです。
「トスカ様もノリが悪いですね。一番最初もこの辺だったので、感動的な最初の出会いを再現して差し上げたのに」
「そういうものは今求めていませんよ。それよりもフーリエはパムレットの作り方を知っていますか?」
「パムレットですか?」
フーリエが空を見ました。何かを考えている感じですね。
「あー、知ってはいませんが、資料はありました」
「……!」
きっと『大陸中のフーリエ』が総出でパムレットの作り方を考えたのでしょうか。それはそれで壮大ですね。
「ただ、道具がありませんね。パムレットを作るには大きな釜や、十分な火力が必要なのですが」
と、突然僕の目の前の土が盛り上がりました。
そしてマオの手には凄まじい『炎』が生成されています。
「……火力。釜。後は何が必要?」
そのやる気をもう少し別な場所……例えば記憶を取り戻す方法を模索するなどに使ってくれると、もう少し楽になる気がしました。