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ガラン王国の危機……?2

 心を落ち着かせる音楽を演奏するには、僕自身が心を落ち着かせる必要があります。

 例えば目の前に凄く面白い何かがあって、笑いをこらえている状況下での演奏は基本的に音に出てきます。


「調子はどうですか? シャムロエ」

「そうね。まだ頭の中がパムレット」

「ぶふっ!」

「笑わないでよ! あー、何か目を閉じるとパムレットがパムレットするのよ。あー、私も何を言っているのかパムレットね!」


 ガラン王国が生み出し、一人の少女を翻弄させた恐ろしいお菓子『パムレット』によって、現在鉱石精霊の魔力を保持しているシャムロエは苦しんで? いました。


「……シャムロエ。ごめんなさい」

「いいのよパムレット、違う、いいのよマオ。とても悲しい出来事に動揺したのよね?」

「……うん」


 珍しくしょんぼりしているマオの頭をぽんぽんと撫でています。


「それにしてもパムレットの素材不足とは。一体何があったのですか?」

「それが、先日行われたミッドガルフ貿易国との会議で色々と決定し、ミッドガルフで試作されたパムレットの調理方法をガラン王国でも作ろうという話になったそうです」

「本家が教えてもらうって情けないわね」


 シャムロエはパムレットのように甘くは無いですね。


「それで、色々な種類を教えてもらって、ガラン王国総出でパムレットを作ったそうです」

「……それで?」


「材料不足になったそうです」


 凄い馬鹿な話じゃないですか!


「そして運悪く、今年のパムレットの原材料が不作。今やガラン王国で売っているパムレットは金貨十枚という超高価な状況に」

「この宿何日分のお金を取るんですか!」


 パムレット一つで僕の村だったら家二つは建ちますよ!


「……パムレットは至高にして究極。その金貨十枚のパムレットはきっと大陸で一番おいしいと思われる」

「あ、価値は高いだけで、ミッドガルフのパムレットの方が美味しいそうです」

「……悲しみの塊。これはもうガラン王国に突撃するしかない」


 え?


 


 ……え?


 ☆


「……ということで、この状況を作り出したガラン王は責任を取ってもらう」

「待って欲しい! いや、待ってください! とりあえずその輝く手を下げて欲しい!」


 えっと、今何が起きているかと言うと、以前王国の危機を救ったとして顔を知られている僕達は難なく城の中に入ることができて、ガラン王の居る謁見の間に到着した後、兵士達を全員外に出して、そしてマオの魔術でガラン王を脅している最中です。


 いやこれ完全に指名手配案件ですよね。


「大丈夫よ。私が許すわ」

「シャムロエに何の特権があるのですか!」

「初代王女? 記憶は無いけど」

「それが問題なんですよ!」


 もはやシャムロエも見届ける感じになっています。

 ガラン王は以前よりも少しだけ痩せていて、以前の『ちょっと世間知らずな感じ』から『ちょっとまともになった感じ』になっています。


「今更ですがミッドガルフ王国以来ですね。あまり時間は経っていませんが」

「感動の再会のはずが恐怖の涙を流すとは思わなかったぞ!」

「許してください。それで、どうしてこんなことになったのですか?」


 マオが手を構えています。これは『下手なことを言ったら『何か』を放つ』って感じですね。


「我にもわからぬのだ! 強いて言えば運が悪かった。最近土の様子があまり良くないと農家が言ってたが、ここまで不作だったとは思わなかったんだ!」


 土の様子が……ん?


「……だからってパムレットが金貨十枚なんておかしい。せめて十枚分の価値の有るパムレットを作るべき」

「アレは国と店で話し合った結果だ! パムレットは高価だが、他の輸入食材はいつもの値段で国民が買えるようにしているだけだ。一時的にパムレットだけ税金を付与し、そこから他の物資へ資金が回るようにしているだけだ!」


 え、つまり。


「国民を守るためにパムレットを……?」


「当然だろう。国民あってのガラン王国だ。パムレットも大事だが、パムレットを作るための材料は時が解決するかもしれぬ。しかしその材料を作る国民は時が経てば廃れてしまう。『人の命は永遠ではないのだよ』!」


 何か刺さる部分がありました。

 以前のガラン王ならこんなことを言わずに、側近のレイジの言いなりになっていたでしょう。

 人って変わるのですね。


「……でも、パムレットを犠牲にした恨みはマオが許さない。バツとして『パムレットしか考えられない頭に』~~。トスカ、離して。何で持ち上げる」

「落ち着いてくださいマオ。おそらく土の様子がおかしかったのは先日の事件の所為でしょう」

「先日の?」


 ガラン王が疑問に思い、僕が簡単に説明をしました。


 ☆


「なるほど。ノームが。まさか実在したとは」


 いつも鉱石精霊と一緒に過ごしていたので感覚がずれていましたが、実際精霊とか神という存在は『出会えれば奇跡』なんですよね。ゴルドが馴染みすぎというか、僕達が変というか。


「では土の様子が変だったのはそのインプとやらがいたからなんだな?」

「おそらくです。すぐ良くなったかはわかりませんので、簡単な作物で様子を見てもらって、そこから判断してください」

「うむ、すぐに回覧を回そう。またしても国の危機を救ってもらったな」

「これくらい気にしないで。それよりもミッドガルフ貿易国との貿易はうまくいっているみたいね?」

「それが……」


 またしても苦い顔をするガラン王。一体今度は何があったのでしょうか?



「ミッドガルフのパムレットを輸入したんだが、元祖よりおいしい。だからガラン産パムレットが売れないんだよ」



「……トスカ! 本場パムレットの危機! これは助けないといけない!」


 またしても何かに巻き込まれるのですね!

 そしてまたシャムロエがそこで倒れていますよ!

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