原初の魔力
途中フーリエが足をパタパタしていましたが、良い感じのリズムを刻んでくれていましたね。思わぬ発見です。
「というかシャムロエ、僕の料理まで手を出さないでください」
「だって、美味しくなったんだもん」
思わず最後に僕の想像以上の高音が出てしまい、その音に驚いてマオも椅子から落ちかけましたよ。
「なるほど、これが音の……」
フーリエが顎に手をかざして何かブツブツ言っています。
「これで検証は良いですか? 僕もお腹が空きました」
「あ、はい! どうぞどうぞ!」
フーリエが厨房から飲み物の追加を持ってきてくれました。甘い果実を搾った飲み物です。
「音が二つ以上聞こえたのは、トスカ様の能力ですか?」
『ご飯を目の前にたどり着けぬ僕』で僕は普通ではありえない『二つのメロディー』を一つの楽器で奏でました。フーリエはそれを聴き逃さなかったのでしょう。
「はい。ただ吹くだけでは面白くないので」
「普段はあり得ないですね。一つの楽器から二つ以上の音は……弦楽器と呼ばれる楽器ならわかりますが、管楽器で……」
ブツブツと呟くフーリエ。そしてむしゃむしゃと食べるマオ。って、僕の野菜を取ってます!
「マオ! 僕のを取らないでください!」
「……マオは今感動している。野菜がこれほど甘いなんて……」
「ならせめて自分の野菜をじっくり味わってください。早く飲み込むから僕の分が無くなるのですよ!」
「……でもなかなか興味深い事も分かった」
そう言ってマオは野菜が乗った皿を見せました。
「何ですか?」
「……マオはこれに『魔力反射』……魔術を反射する術をかけた。でもこの野菜は他のと変わらない。そして少しだけ魔力を帯びている。まるで音が魔術みたい」
「え!」
反応したのはフーリエでした。というか、僕のご飯に何をしているんですか!
「……原初の魔力……」
「何か言いましたか?」
「いえ、ワタチの数少ない知識から、一つ心当たりがあったので」
「と言いますと?」
「魔術や精霊術の中にも特殊な分類が存在します。それが『原初の魔力』と呼ばれる属性で、その中に『音』という物があった気がします」
「『原初の魔力』ですか……ちなみに他にはどういう物が?」
そう言ってフーリエは少し考えました。
「例えば『鉱石』や『光』も原初の魔力と呼ばれています。この世界が生まれ、最初から存在した属性とも言われていますね」
もし僕の能力がその『原初の魔力』と呼ばれる分類なら、結構凄いのでは?
「なんかごめんね……」
と、突然シャムロエが僕に謝罪しました。
「ど、どうしたのですか?」
「そんな凄そうな能力を『腰痛治療』なんかに使わせちゃって」
「それを今言わないでください。完全に真面目な話をしている最中だったんですよ!」
シャムロエは一体どういう思考をしているのですか!
「まあ、真面目な話はこの辺に。どうせこの城下町にはしばらく滞在するわけだし、フーリエも色々と協力してもらって良いかしら?」
「はい。むしろ『悪魔』に関する情報はワタチも気になっていました」
「そうなの?」
「色々と噂で聞いているので」
「噂?」
そして、フーリエの発した言葉で、僕達の今後の行動が固まりました。
「この城下町……いえ、ガラン王国では『悪魔契約』という物が流行っているそうなのです」
十話目(プロローグ含め)となりました! 皆様の温かいコメント等で色々と挑戦しようと思い、のびのびと活動を行えております!
これからも楽しく活動していきます!