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あなたが死ぬまでのデスゲーム  作者: Estella
第一章 第一回デスゲームファースト
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最初の試練―3

 高校生の少女は話すことを考えているようで、何秒か考え込んでから、うんうんと頷いた。


「話したいことがいっぱいあるし、君達も聞きたいことめちゃくちゃあると思うんだけど、まずは自己紹介と行こうか。私は日之内ひのうちゆう、十七歳の高校二年生だお~、まぁ基本謎テンションだから気軽に接してよ。そっちも高校生なんじゃない?」

「あ、はい、そうで……そうだよ。私は陰陽寺おんみょうじ環奈かんな、十七歳。同い年だね。よろしく」

「あたしは佐藤さとうかえでだよ。高校二年生だけど誕生日が遅くて十六歳なんだ。よろしく、ユウさん」


 けらけらと軽く笑って自己紹介をする少女―――日之内ひのうちゆうが手を差し出してきたので、気さくな彼女の態度に思わずあなたと楓の態度も砕ける。

 さすがにそこまで知らない人を呼び捨てにはできなかったが、まるで長年の友達かのように接してくる彼女は、あなたも楓も嫌いではなかった。

 むしろこの状況で人見知りをされたら困るくらいだ。自分達は何も知らないのだから。


 先程より拗ねていた少年が腕を組んで、こほんと咳をして、足を肩幅に広げてにぃと口角を上げた。優とはまた違うタイプの性格のようだ。


「俺は十八歳、朝霧あさぎり零夜れいやだ。誕生日が早すぎてコレだが、一応高校二年生だ。それと、あそこの日之内とは不覚にも同じ学校だ」

「ん? 不覚って何かな? 女子にそれはひどいんじゃないかなー、彼女できないぞい?」

「ぁ、ぁの! わたしの名前は沢田さわだ加奈子かなこです。十五歳で、中学生です」


 零夜とまた仲良く喧嘩を始めた優の二人を背景に、少女――沢田加奈子が自信なさげに自己紹介をする。ぶかぶかの灰色セーターは所為萌え袖の状態であり、加奈子は口元を隠すようにして手を使って覆っているので、完全に萌えるポーズ。

 そして身長の低さと縮こまっている守ってあげたい小動物感、髪の長さと色による存在感。そして何より―――日本では珍しい金色の瞳が、加奈子の特徴であった。


 普通に出会っていたならば。友達として仲良くなれるのならば。もしそれがこんなデスゲーム会場ではなかったのだとしたら。

 彼女の肩が、恐怖に震えているのを見なかったのだとしたら。

 あなたと楓は、気さくに彼女に接することができただろう。でも、無理だ。中学生があんなデスゲームを潜り抜けて、ここまでやって来たのだ。

 十五歳として、背負ったものが大きすぎるのだ。高校生であるあなた達でさえ、あんなに苦労してここまで辿り着いたと言うのに。


「さて、自己紹介も終わったことだから色々説明するね。十九人だ。このデスゲームに挑んだ者は十九人いた。その内五人は命を落とした。今此処に集うのは十四人という事だ。それを、君達が来るほんの直前に知ったんだ」

「知ったって……どうやってなのか教えてもらっても構わないかな?」


 此処に来るまでにすでに誰かが命を落としたと聞いて、楓は僅かに眉をひそめながら優に問う。

 優は肩をすくめて頷いた。 


「もちろん。一人は情報係を名乗る女、ジョー・ハッカー。もう一人は指導員を名乗る男、ナラシ・カイだ。ほんの少し前に此処にいたんだけどねぇ」

「どう考えても名前的には性別逆だよね、あはは」


 ジョーはどう考えても女の名前ではないだろう、と思ったあなたは苦笑いをする。優も確かにその通りと頷く。

 だが今名前は重要ではない。ずっと此処にいるわけにもいかないだろう。デスゲームがこれから続くのだとしたら―――考え、たくもない。

 今はこうして緊張をほぐすしかないのだ。少なくともあなたや楓にとっては。


 誰も殺したくないし、誰も死んでほしくはない。こんな馬鹿げた世界で、敵の思い通りになるなんてまっぴらごめんだ。

 だが、抗うのは不可能。ならば、精一杯守りたい。楓を、己の大親友を。

 そして一緒に脱出するんだ。元の日常に戻るんだ。母も父も、きっと心配しているから。


 唐突に気づく。

 もう五人死んだ? もう死んだのか。誰かが殺したのか、それとも、何なのだ?


「―――さて、もう十四人もそろったことだし、そろそろ現状確認をした方が良いと思うんだよねー。それぞれ一個のグループで固まってたら、いつまでたっても終わらない」

「ジンさん」

「無理だ! 誰かもわかんねぇ奴に個人情報なんて言ってたまるかよ!」

「えぇ、わたくしも同意見ですわ。デスゲームで個人情報を言ったら危ない気がしますの」


 混乱するあなたの耳に響いたのは、重厚な男性の声。優が彼の名前を呼んだので、あなたは彼の名がジンであると判断する。

 そんなジンの言葉に、紫のくせっけで前髪を使って顔の半分を隠している少女と女性の間らしき年齢の女が反論し、派手にウェーブさせた茶色の髪の毛をした金持ちそうな女性がそれに応じる。

 発言をした二人に同意見なようで、頷く人達もちらほらいる。

 あなたは両方に説得力があると思っている。デスゲームでお互いぎすぎすしたままなら、それこそ醜い殺し合いに変わる。敵の思いに乗せられるのだけは絶対に嫌だ。


 だが一方で、まだお互いを知らない今では誰が味方なのか、誰が敵なのかわからない。この中に敵が紛れ込んでいる可能性もなくはない。

 でも、ジンの言う通り行動を起こさなくては進まない。あなたは声を張り上げる。


「では、まずはできる人だけで自己紹介をしませんか! 信頼できない方も、緊張がほどけたらで構いませんので!」

「そうだね、君、ナイスだよ。じゃあ、自己紹介をしても構わない人は手を挙げてー」


 あなたが声を張り上げ、ジンがにやっと笑って親指を立てる。

 何人かが恐る恐る手を挙げ、そして何人かが出来るわけがないと嫌悪を隠しもしない。そして手を挙げない者の中には怯える者もいた。

 あなた達のグループは全員手を挙げた。加奈子は少し迷ったようだが最終的には手を挙げていた。

 その中でも印象的だったのは、自己紹介反対派の親子とみられる女性と少女が絶えず慰めている男の子だった。

 誰が何を聞いて何を話しても涙が止まらず、親子は情が移ったようで慰めてやっている―――とは、ちらちらとそちらを窺うあなたを見かねて話した優の言葉だ。


「一人で試練をクリアした人、二人で試練をクリアした人。此処には私の知る限りその二つの種類があるみたいなんだ。例えば私は零夜とクリアしたけど……たぶんあの子は、二人での試練で何かあったんだと思うよ。―――一人だけ、クリアして来たんだろうね」

「それって……!」

「あくまで推測だし、外れてたらとてつもなく失礼なんだけどさ。手が滑ったんだと思うんだよね……あんな子供に、拳銃なんて扱えるはずがない。どう見ても小学生だしね」


 背中を丸めて縮こまる加奈子は目で見ても百四十センチくらいだろう。だが、あの男の子は百三十センチもないように見える。

 二人して身長が小さいが、あんな男の子が中学生以上なはずがないだろう。


「ひどい……あんな小さな子に試練させるなんて」


 楓がぽつりと漏らす。あなたも全く同じ意見だ。小中学生に人の死を背負わせるなんて、このデスゲームを考えた者は余程人の心がないのだろう。

 そもそも、あなた達高校生すらもまだ生死について考える歳ではない。人の生死を握ることなどもっとだ。学生どころか、大人でもめったにないだろう。


 これ以上考えるとまたあの時の恐怖を思い出してしまいそうだったので、あなた達は大人しく自己紹介を始めることにした。

 手を挙げた人数はあなたと楓を含めて七人。そして手を挙げなかった者が七人だ。

 まずあなたと楓が自己紹介をする事になった。あなたは言いだしっぺなので、自分から初めに自己紹介をする事を選び、その友人として楓も二番目に自己紹介をした。

 次に、優と零夜が自己紹介をする。高校生四人が率先して自己紹介をしたのを見て、周りの大人たちも段々とほぐれてくる。

 だが手を挙げなかった七人は警戒した表情のままであることを、あなたは見逃さなかった。だが、今はそっとしておこうと思った。


じんさんはじんさんだよー。三堂さんどうじんだ。二十九歳で、医者をやってるんだ、これでもねー。絆創膏くらいならいつも持ってるから、軽い怪我くらいなら受け持つよー」


 中央のグループで話して居た、リーダーシップのある男性、三堂さんどうじんがひらひらと手を振って、しかし真剣な表情で言う。

 長袖の白色のシャツに医者が着るような白衣で、典型的だとあなたは思う。茶色がかった黒髪と細くも大きくもない目だが、笑うと何とも言えない妖しさと魅力と迫力がある。


「沢田加奈子、十五歳です……中学生、やってます……! ぁの、別に髪の毛染めてないですし、カラコンでもないので……け、警戒しないでください……」


 ―――カラコンでも染めたものでもない?


 あなたは首を傾げる。本来赤色の色素がなければ髪の毛は赤く染まらないはずだ。だが、赤色の色素なんて人間の体内にあったのだろうか。あったとしても、髪の毛が赤く染まるほど多くあるのか。

 勉強不足なのかもしれないが、金色の瞳はあれど赤色の髪をした者など見たことがない。染めた者ならいたが、元からなんて者は絶対に居なかった。

 どちらにしろ科学者でも何でもないので、色素についてなどそこまで知らないのだが……。

 それにしても好奇心が湧き上がる。どういうことなのだろう。もしくは彼女の遺伝子が特別変異でもしたのだろうか。だがそれならば、ニュースに出ているはずだ。


 まあ、お互いがお互いを全く知らないのも事実。これから知っていけばいいと思ったあなたは、黙って他の人の言葉に耳を傾けることにした。


「私は氷迅ひょうじん澪規れいきと申します。人は私をレイと呼びます。どちらでも構いませんよ。二十二歳、料理人です。お料理なら任せてください……」


 コックの着るような白衣と帽子――なぜかずり落ちそうになっている――を着用し、ポケットから皿らしきもの、フライパン、包丁、箸とスプーンとフォークが見える、黒髪を腰まで伸ばした中性な顔立ちをした男性が無表情でそう言う。

 基本的大人しそうな人だ。黒髪黒目で、髪はストレートに整えてある。目は少し淀んでいて、何処か遠くを見ている感じがする。

 それにしても大量の料理器具はどうやってポケットに入れたのだろうか。フライパンを入れるスペースなど絶対にない。いくら二つのポケットがあっても、長さ的にだ。

 

 大体こういった人は知らずのうちに仕事をしていて、どこからともなく道具を取り出し、知らぬ間に完璧に完成させているのだ。

 あなたはほんの少しだけ近づきにくさを感じて、あはは、と苦笑いをする。

 ともあれ、これで自己紹介をしても構わないと言った七人の自己紹介は完了した。あなたは警戒している七人の方を窺う。

 すると、ぼさぼさの青い髪の毛の、目が光らずくまができ暗い顔をしていた男性が深い溜息を吐く。まるで、全ての罪と憎悪と焦燥を吐くかのように。


「……っち、オレが自己紹介してやるよ……」

しばらく自己紹介回だと思います。あとちょっとで敵側三人が出てくると思います。

しばしお待ちを。

メインのデスゲームが始まるのは、もうちょっと後です。私は楽しみを後に残しておくタイプです。

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