Warld created
確かに終わってほしいと思っていた。多くの者が。
けれど別に、こんな結果を予想していたわけじゃない。望んでいたわけじゃなかった。
◆■◆
古より永遠と終わりのない戦いが繰り返されてきたその世界。
今まで一度として晴れたことのなかった曇天は、まるで引き裂かれたかのように一点から割れて太陽とは違う、何かの光がさしていた。
それは戦いの匂いが充満するこの世界を変えてくれる希望の光のようでもあり、何か得体のしれないことが起こるさきがけのようでもあった。
そしてその後、そのどちらも正しかったことを教える。
――――――――――――――――終わり
戦いの喧騒で満ちていたこの世界に、その声は嫌に明瞭に響いた。
まるで脳内に直接響くかのような音に、武器を手に切り結んでいた者、苦痛に喘いでいた者、誰しもが黙し、自然とその視線を割れた空へとむけた。
――――――――――――――――――――この世界に終わりを
――――――――――――――――この戦いに終止符を
その謎の声に誰もが沈黙する中、ただ一人猛烈な怒りに燃えるものがいた。
「戯けたことをぬかすなよォ、どこの馬の骨とも知れぬものがァ!!!!!!」
この戦場を、世界を支配しているといっても過言ではない者、オーディンであった。
「この戦場、この世界を終わらせるなどできるものかあ!!!!!!! スレイプニルッ!!!!!!!!」
烈火のごとき勢いで愛馬を走らせ、そのまま天を駆り、その『声』を発したものを討たんとする。
―――――――――――――愚なり
ズドンッ、と。
腹に響くような音と共に、その戦鬼はあっけなく大地のシミとなった。
この世界の支配者と呼べるオーディンが、まさに虫けらの如く踏み潰された事実に、誰しもが固まる。
それをなしたのは、空より伸びた極太の腕、らしきもの。
腕と明言しなかったのには理由がある。腕というにはいささか不格好すぎたからである。
腕をモデルに作られた鈍器‥‥‥という表現が正しいか。
―――――――――――――すべては”変化”する
それは宣言。
――――――――――――――これは起点に過ぎない
それは事実。
――――――――――――――――この”変化”は、連鎖する
それは、現実。
そしてそれは起きる。
天から振り下ろされた腕はそのまま大地へとめり込むと、そのまま奥深くへと沈んでいく。
それはまるで、埋まっている何かを探しているかのようで。
そして目当ての物を見つけたのか動きが止まると、一瞬の静寂の後に強烈な揺れが大地へと走る。
あまりの揺れに地に立つ者達は情けなく地面にへばりつき、羽を有する者たちは逃れるために空へと舞った。
だがそれも無駄に終わることとなる。
そしてそれを知るのは、それを行った者以外、つまり腕の持ち主以外にはいないだろう。
なぜならこの世界にいたもの、あったものすべては、星の核を砕かれたことによって起きた大爆発に巻き込まれ、塵も残らなかったのだから。
□◆□
この冗談のような破壊を行ったのは他でもない、”世界そのもの”であった。
この世界の何が、”世界そのもの”をこういった行動に駆り立てたのか。それは定かではない。
なぜなら”世界そのもの”は、これを明確な理由をもって行動したわけではないのだから。
圧倒的な力を持つ超常の存在。その神意は、最早図り知ることはできないのである。
けれどそれは、これから始まる『創世』の始まりに過ぎなかった。
"世界そのもの”にとって、世界とはいわば自らの手で作った庭のようなものだ。
多くの命が生まれる、箱庭。
しかしその気になれば、あっという間にただの土くれへと変わるような、そんなもの。
そして今無に帰した一つの世界は数あるうちの一つに過ぎない。
故に"世界そのもの”は全ての世界を破壊することにした。
そしてそれを礎として、新たな世界を築き上げるのだ。
まず元あった世界を、そこに生きていた者も例外なく滅ぼす。
そして数えきれないほどあった世界の全てが破壊され、新たに、たった1つの世界が構築されていく。
以前なら、それは何気ない『作業』に過ぎなかった。
しかし今は、心なしか完成した世界にこれ以上ない愛おしさや、感動があふれるようだった。
だから”世界そのもの”は、今生みだしたこのたった1つの世界に執着した。
そしてその執着は、”世界そのもの”に『この世界で生きてみたい』という願望を抱かせる。
しかし”世界そのもの”の力は1つの世界で生きる存在が持つとしては余りに強大すぎる。
それこそ、ただそこにあるだけで無秩序に破壊をまき散らすというのも冗談とは言い切れない程に。
どうすればいいのか。
熟考する。
そして導き出された結論。それは―――――――




