#06 神の記憶を持つ少年
カツン、カツン。
鉄製の階段に響き渡る心地良いリズム。階段の先には『六甲探偵事務所』と書かれた看板があった。
「六甲さん、居ますか?」
ドアをノックして憐は中に入った。其処には、見慣れた相棒の姿と、帽子を深く被り眠っている男が居た。
「憐。どうした?」
映司が椅子から起き上がり、憐の元に来る。
「ん?ああ。神の記憶を持つ少年が居たじゃねぇか。ソイツに会いたくてよ」
すると映司は誰?と言う顔をした後、目をつぶった。
「映司?おーい!」
恐らく、『アカシックレコード』の中にある『宇宙の記憶』にアクセスしているのだろう。
「ああ!蕪城 天か!」
アクセスし終えた映司を他所に、憐は帽子を深く被って寝ている男____六甲 ガイに話し掛ける。
「ガイさん、起きてください」
と言いつつもあの驚異的な腕力を持つ右腕でガイを叩く。
「起きてる起きてる。だから殴るな」
そう言ってガイは起き上がり、本棚から『一冊の本』を取りだし、読み始める。
「依頼に来たんですよ依頼に」
憐がヒラヒラと一枚の紙を揺らしながら言うと、ガイは本を机に置き、態度を変える。
「誰から頼まれた?」
この人に嘘は付けないなと思いながら憐は答える。
「防衛省陸軍大佐の加賀 来です。知っていると思いますが」
するとガイは煙草に火を付け吸い始める。
「加賀か。あいつの事だ。どうせ『新世界』の事だろ。そして、調べて欲しいのは桜仙魔術学院旧式魔法師学科2年1組格闘魔術部副部長 霧雨 奈々だろう」
「……知ってたんですか?」
ガイは煙草を擦り潰しながら、
「俺も引っ掛かる事が合ってな。偶然の一致だ偶然の一致」
と答える。流石”自称”ハードボイルド探偵だ。と思いながら話を続ける。
「で、話の続きですが、来週の三校親善魔法試合のタイミングで連中は学院の久遠のデータを盗みに来るはずです。その時に備えて、『ゴットレコード』の保持者である蕪城 天に接触して欲しいとのことです。報酬は…ひーふーみーやー…1万円札300枚、つまり300万円です」
無論、憐個人の金額では無く防衛省からの報酬だ。
「…分かった。引き受けよう」
そうして、神の記憶を持つ少年へのコンタクトが始まった。