#03 剣ヶ峯家の日常
「ただいま~」
「ただいま帰宅しました~」
「姉さんその上品気質な言動直してよ…」
「あら?上品なのは女性の性よ?」
玄関で繰り広げられる雫と憐の弟、誠の口喧嘩を見ながら、憐は随分賑やかになったなと感じていた。
二人は_元々の兄弟は誠だけだが、5年前までは両親や親戚と同じく俺から距離を取っていた。祖父が亡くなった際に顔を合わせた際も、汚物を見る様な目でこちらを見ていた。しかし、どういう訳か5年前の朝鮮連合による日本攻撃の後急に家に押し掛けて来て、「一緒に住むね」とだけ言って家を占拠した日から仲良く暮らしている。最も、誠は優秀な魔術師であると同時に、物理学者でもあり、魔法学者でもある天才なので、一年の内6~8月の間は大学に籠っている為、その間は雫と憐二人っきりになる。
◇ ◇ ◇
「ほぇ~兄さんが風紀委員ねぇ…世の中奇妙な事をあるもんだ」
雫の入れたコーヒーを飲みながら誠が憐を馬鹿にしたような口調で話に相槌を打っている。その奇妙な事と言うのか少々癪に触ったが、気にせずコーヒーを飲む。
「お前こそ、来年受かる自信の程は?」
誠は来年、桜仙魔術学院を受験する予定なのだ。実は誠も憐と同じ『力』を持っているが、力を低くさせた事で演算領域を確保しているので、WSDは使用出来る。兄より優れた弟なんて存在しねぇ!なんて言いたくもなるがそれは仕方が無いことだ。
「ふふ、兄さんも僕の魔法の正確性と魔法理論の凄さを知ってるでしょ?受かるに決まっ「死ね!」うおっと!」
憐の蹴りが炸裂した瞬間、部屋が揺れる。普通なら体勢を崩しそうだが、慣れている雫はその黒い艶やかな髪を少し揺らしながら一人優雅にコーヒーをたしなんで居た。
「この野郎…僕の方が優秀なんだよぉぉぉお!」
「黙れ魔法を選んだ雑魚がぁぁぁぁぁぁぁぁ!」
瞬間移動しながら闘いを繰り広げる二人に嫌気が差したのか、雫が手を二人の方に向ける。すると、
「ぬ、ぉ、ぉ…」
「こ、の、や…」
二人は徐々に動きが遅くなり、体が冷えて切っていた。
「冷却造形魔法『アイスフォール』」
そして雫の無慈悲な追い討ちによって二人は完全に氷の銅像と化していた。
「五月蝿くするからですよ…全く」
雫は冷却魔法の使い手だ。先程二人の体温を下げたのは振動減速魔法『アイスジェル』。これは振動による熱発生魔法の逆魔法で、対象のみを冷却させられる。そして追い討ちを掛けたのは冷却造形魔法『アイスフォール』。これは水蒸気に水分子を付着させ、自在に氷結させる魔法。一応、座標設定や温度設定等連続して高度な演算を行うので、最高難度魔法に指定されている魔法だ。これを15歳でやってのける辺り、流石と言うべきだろう。そして、雫は冷却魔法の自在さから『氷帝』の異名を取っている。
「い、つ、も、ど、う、りだな」
「う、ん」
そして、此は剣ヶ峯家の日常風景だった…
これはヒドイ…
後、評価してくださった方、有り難うございます!