あの娘を救うまでは死ねない
僕の名前は村上修二。
千葉県の公立高校に通う二年生だ。
部活はサッカー部に所属していてレギュラーを目指して日々練習中である。家族構成は父母に兄が1人いる。
どうしていきなり自己紹介を始めたかというと、自分をしっかり認識していないと頭がおかしくなりそうだからだ。俗に言う異世界召還が自分の身におこってしまったらしい。
***
季節は春。
1ヶ月ほど前に高校2年生になった。
自宅から15分ほど自転車を漕いで自分が通う千葉県立上成高校に今日も登校した。いつもの朝だ。それから授業の合間や休み時間に友人の達也達とふざけあったり、気にはなっているが会話したことのない読書中の三沢さんをぼーっと眺めていたりしたらあっという間に昼休みになった。いつもの1日である。ただここからがいつもの1日とは大分変わってしまった。
「しゅうじ~、先輩がグラウンド整備昼休みにしとけって言ってたぜ。今からやりに行こうや。」
「おっけー。弁当食べたらいくわ。先行っといてくれ。」
達也達にそう告げて先にグラウンドに行ってもらった。僕はその日お腹の調子が悪くて食べるのが遅かったからだ。クラスを見渡すと、1人で弁当を食べている三沢さんとあと数人がクラスの中にいた。三沢さんは今回のクラス替えで初めてクラスが一緒になった。キリッとした眉毛に目尻が上がっていて気が強そうな印象をうける中性的な美人だ。僕が三沢さんを気になっているのは美人だからというわけではない。今日から一年以上も前、入学式後に教室で仲良くなろうと三沢さんに話しかけてきた女の子達に筆箱を投げつけ一言。「私に近寄るな。」
この事件をきっかけに三沢さんはこの学校から孤立してしまった。
どうしてあんな事を言ったのか、1人で寂しくないのだろうか、などと三沢さんに訊かないかぎりどうにもならないことを考えていた時にその『時』はきてしまった。教室にいたはずなのに一瞬で視界が真っ暗になり、急激に意識が遠のいていった。誰かの悲鳴をきいたのを最後に僕の意識は闇にとけた。
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目を覚ますと森の中だった。時刻は恐らく昼だが辺りは木々が生い茂っており薄暗かった。服装は学校の制服のままでポケットには家の鍵などが入ったままだった。何度思い返しても記憶は学校の昼休みで途切れておりどうしてこんな場所にいるのかは見当もつかなかった。とにかく車道にでようと森の中をさまよっていると木々が途切れて原っぱに出た。ここで僕は自分の目を疑ってしまった。太陽が空に浮かんでいる。ここまではいい。しかしその数がおかしかった。
誰がどうみても太陽が『二つ』あるのである。
ここで話は冒頭に戻る。