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朧時 ~終わりない夢~  作者: 佐治道綱
第四章 無限の世界
32/48

31:「ミキ・ナガクボ」




 長久保美季。


 記憶の底。『リンクス。リンクス…』


 懐かしい声。いつも聞いていた声。


 長久保美季。『好きだった事だけ思い出せば良いのよ』


 違う。好きな事も嫌な事も。何もかも。全て。今の私を形作るモノだ。




 記憶の交錯。夢と現実。


 誰かの声。『簡単だ』『お前なら出来るはず』『思った通りだ』


 艶やかな黒髪。美季の溌剌とした笑顔。


 雨の日。石畳の大通りが血に染まる。


 震える声。『ずっと昔に見た夢…』




 私の記憶は全てを見る。記憶がハシル。


 声。『間違えだったと謝られたわ』


 知っている。全ての記憶。


 彼女の声。『知らなかったの?』


 名前を聞いた俺。『どういう漢字?』


 彼女の微笑み。『同じよ』


 すでに見たものをまた見る意味があるのだろうか。


 ある。再び見る事によって、再び感じる事、新たに感じる事。


 過去に戻る意味などあるのだろうか。




 長久保美季と過ごした日々。


 確かな記憶。痛みは和らぎ、不安は消え去る。暖かな心。


 黒く澄んだ瞳。『アナタの為なら命さえ投げ出しても良い』


 私もこの命、この心を捧げよう。アナタのため。


 アツイココロ。




 悪夢を見た声。『声が聞こえたの。とても恐ろしい声』


 同じ夢を見た。同じ恐怖を感じていた。溶け合う意識。


 溶け合う意識。溶ケル。沢山ノ私。


 感じていた。私が私デハナクナル。


 新たな心が生まれていく。沢山ノ私。




 太陽の溶ける時。


 美季。『アナタがどんどん違うアナタになっていく』


 私も知っていた。感じていた。自分が自分でなくなる感覚。


 私。『いけないのか?』


 彼女。『わたしがどうこうじゃなくて。アナタがアナタでいられるかなのよ』


 滑稽な心。私は常に私を見ていた。冷めた心で。


 私が私でない感覚。生きている感覚が希薄になっていく。


 ワタシデハナイ。


 悲しげな声。『わたしには見えるの』


 未来を見る瞳。悲しげな瞳。




 別れの言葉。『色々あったのよ』


 死んでいったココロ。


 アラタに生マレタ心。


 ソレダケノコト。




 全ての記憶。


 私はたくさんの声を聴き、たくさんのものを観る。




 彼岸と此岸。


 生死の海を挟む世界。


 離れていて、近付けない想い。




 聞こえる。美季の声。美季の心。


 見える。彼女の視点。彼女の見るもの。


 八年前のミキの声。『リンクス。良かった…』


 長久保美季は全てを観ていた。全てを知ッテイタ。




 閃き。未来を見る瞳。


 多世界の未来。全ての未来。


 彼女の瞳は何を観るのか。心は何を知るのか。




 私は何を知るのか。何を望むのか。


 悪夢の時。八年前のあの時ヘ。


 ウロボロス。私を呑み込み、連れて行け。





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