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朧時 ~終わりない夢~  作者: 佐治道綱
第四章 無限の世界
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26:「知らない自分」




 何度も繰り返す。


 一体、何人の自分を殺したのだろう?


 何度も繰り返してきた。


 一体、幾つの生命を奪ってきたのだろう?




 幾重にも重なる世界。多世界。


 見えない世界。無限に広がる。無限の可能性。


 同じ世界。同じ時。幾つも存在する同一の存在。


 私の中。幾つも存在するたくさんの私。同一の存在。


 心を襲う消失感。空しさが広がる。限り無く広がっていく。


 ここに存在する全ての私。


 私。今のこの私。それ以外の私。何を思い死んでいくのか。


 ただ自分に殺されるだけの哀れな存在。たくさんの私。


 死んだ私はどこへ行くのか。


 機械的に動く右腕。右手。


 数分前の自分に向けられる銃口。




 気配。


 背後に感じる。




 振り向く。


 背後には転移してきたウロボロス・システムがあった。


 ウロボロスから吐き出され、再構築されていく存在。


 おぞましい光景。肉が、血が、眼が、口が渦巻いている。


 完成される肉体。金髪の自分の姿。


 向かい合ったヘテロクロミア。右眼は金色。左眼は銀色。


 「振り向いたのはキミが初めてだな」


 彼は私に冷たく微笑みかけていた。


 ウロボロス・システムの測定。今の私と向かい合っている彼の肉体年齢を比べる。比較される数値。ウロボロスの判定。


 今の私よりも彼の方が肉体年齢が僅かに上。


 知らない自分。数分間だけ未来の自分。


 「何を驚く?今までキミも行ってきた事だろう?」


 私は死ぬのか。今度は私が死ぬ番なのか?


 可能性。何でも有り得る。狂った世界。世界の規則など無意味。


 無意味。何もかも有り得る。存在など無意味。生命など無意味。


 全て無意味。


 死を覚悟した。私。私の中のたくさんの私。


 彼の声。「己への約束だ。私は自分で放った言葉を違えたりはしない」




 その通りだ。そうでなければならない。


 私が私の中に沈んでいく。たくさんの私が深い底へと沈んでいく。


 私の身体が震えている。


 私の中の誰かの呟き。


 己への約束は破れない。彼に殺されるべきだ。


 ハハハハハハ。


 私の中の誰かが笑った。


 死ぬのが怖いのか。


 私の中の誰かが答える。


 死ぬ事など恐ろしくない。


 多世界の中では私たちはどこにでも存在し得るのだ。


 誰の声だろうか。どこかで聞いた台詞。


 炎。燃え上がる。


 私の中の誰かの怒り。


 それは他人の言葉だ。他人の言葉で語るんじゃねぇよ。


 炎。焼き尽くされる私の中の誰か。


 震える。身体が震える。


 怒りの震え。




 死の宣告。「己への約束を違えず、大人しく死ね」


 彼は懐に右手を差し入れた。ゆっくりと拳銃を抜く動作が見える。


 俺の声。「俺の言葉とは思えねぇな」


 俺の右手の指が引き金を引いている。


 無意識。銃口は素早く彼に向けられていた。


 何度も放たれる銃弾。


 何度も轟く銃声。


 銃弾は拳銃を抜こうとしていた彼の身体を次々と貫いていった。


 俺の怒りの声。「約束とかに拘ってねぇで、実力で殺すべきだろうが」


 血を噴きながら仰向けに倒れる彼。


 俺は彼を見下ろす。彼が息を引き取るのを眺めていた。


 「臨機応変ってやつだ。自分の事だからよく知ってるはずなんだがな」





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