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朧時 ~終わりない夢~  作者: 佐治道綱
第四章 無限の世界
25/48

24:「子供の頃」




 二十四年前。


 辿り着いた時。紡ぎ直される意識。


 再構築された肉体。感覚。激痛。狂おしい吐き気。


 引いていく痛み。世界の色が見えてくる。


 懐かしい色。懐かしい記憶。風景。


 これは夢か。幻覚か。


 ウロボロスのスクリーンは『波』の変動を示している。私が目標点として定めた時代。そこに私が転移した事によって生まれた『波』の歪みなのだろうか?


 私の目、私の感覚で確かめよう。この時が本当に過去の時であるかどうか。




 懐かしの道を歩く。


 日の光に輝く草花に包まれた道。


 鮮やかな青紫。桔梗の花が咲いている。


 我が家の近く、野原に続く道。




 近所の野原。八歳の頃の私がそこにいた。


 眩い太陽の光を浴びながら、元気に近所の友達らと一緒にはしゃいでいる。


 私の心。あれが子供の頃の私?


 子供の頃の自分。金髪の少年。明るい笑顔。楽しそうな声。


 あんな時もあったのかもしれない。朧げな懐かしさが心の中に広がる。


 長閑な一時。野原で遊ぶ子供達を眺める。


 ジュラルミンケースを足下に置き、ケースを開く。鍵は開いていた。中にはヤツらが用意した拳銃や組み立て式のライフル。それらを手に取り、異常がないか確かめていく。


 まずは子供の頃の自分を殺す。


 これで私の存在が即座に消滅すれば、多世界などというものは存在しない事になる。世界の矛盾は世界そのものが呑み込んでしまうという事だろう。消滅しなければ、計画通りに少しずつ前の時間に戻り続け、自分を殺し続ける。これが可能ならば、ザウバーの主張する多世界とやらが実在する証拠という訳か。




 友達と別れ、家に帰ろうとする八歳の私。


 どこか寂しげな表情。下手な口笛を吹きながら、こちらへと歩いてくる。


 私は道の真ん中に立ち、歩いてくる私を見つめていた。


 風が吹き、緑の草や青紫の花が揺らめく。


 小さな私がこちらに気付く。


 人見知りをしない子供。私に向かって明るい笑顔を見せている。


 私から私への挨拶。「こんにちは」


 八歳の私。「こんにちは!」


 少しだけ首を傾げて、こちらを見つめている子供。


 「おじさん、どこかで会った事あるよね?」


 「いいや。君とは初めて会ったはずだよ」


 懐に右手を差し入れ、ホルスターから拳銃をゆっくりと抜く。


 少年の目に私の右手の拳銃が映った。


 驚きの声を上げる少年。恐怖の声ではなく、驚嘆の声。


 物怖じしない少年。「凄い!かっこいいガンだね!」


 頭の中で何かが軋む。軋むような音が聞こえる。


 聞き覚えのある言葉。


 ごく自然に銃口を少年に向ける。「そんなに凄い銃じゃないんだよ」


 記憶がブレる。


 これはデジャビュか?


 昔、聞いた事のある声。私の声。


 これもデジャビュというのか?


 好奇心で目を輝かせている少年の私。


 「ねぇねぇ。それって、もしかして本物?」


 遠い記憶?『ねぇねぇ、それってもしかして本物なの?』


 自分を殺す。冷徹な心で引き金を引いた。


 銃声が轟く。


 遠い記憶。似た記憶。混乱した記憶。


 コレはオレの記憶か?


 自分に向かって飛んで来る銃弾が見えたような気がした。





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