22:「ウロボロス・システム」
白と銀の部屋。ヴァイス。ズィルバァ。
マシンルーム。機械で埋め尽くされた部屋。
静かな空間。静かな機械音。
フラーゲンが薬を投与する。
「ウロボロス・システムに順応する為に必要な薬です」
「どういう仕組みで人間を別の場所に転移させる事が出来るんだ?」
「ウロボロスが対象の物質に浸食、対象の物質の構成を分解し、収縮吸収します。ウロボロスが目標点に転移した後、対象の物質を再構築します」
銀色のマシーネ。白色の照明に照らされている。
巨大なコンピューター。今時見かけない大袈裟な代物。
私の声。「対象の物質か。その対象がきちんと再構築される保証は?」
戸惑いの声。「保証はありません。危険が無いとは言いきれませんね」
人間を分解し、転移させる。そんな事が本当に可能であろうか。
俺の声?「凄いね。これがタイムマシン?」
「この部屋のコンピューターはウロボロスを補助する為のものです。ウロボロスが観測した『波』を記録したり、観測された『波』からそこでどんな事が起きているのかをデータ化する為の装置です。ウロボロスの本体はとても小さな物なんですよ」
フラーゲンは機械の壁の中から小さなケースを取り出した。銀色の小さなケースを開くと、中には二つのコンタクトレンズのケース。LとR。
「これがウロボロス・システムです」
俺の声。「こんなもんが?」
「ええ。このウロボロス・システムの使用方法をあなたにも勉強してもらわなければなりません」
うんざりした俺の声。「そいつはかなり複雑な操作を必要とするってのか」
「それほど複雑ではありませんよ。ただ、使用方法の誤りはあなたの命を危険に晒す事になるでしょうね。機械の操作はあまり得意ではありませんか?」
冷たい私の声。「いや。使用方法を教えてくれ」
ザウバーの冷ややかな眼。
「リンクス。過去に行った後、君の自由に行動してくれて構わない。ウロボロスは君の行動を含む『波』をこちらに送って来るが、こちらから何かの指示を与える事はない。君の言った多世界の矛盾点、それを次々と作り出すような行動をしてくれたまえ。それが我々の研究にとって有益なデータとなるだろう」
俺の言葉。「どうなったら俺の勝ちになる?もしも、多世界の存在を確認したら、その時点で俺の負けになるのかねぇ」
ゾガール所長。「我々が驚くような多世界を作り出せれば、君の勝ちとしよう。出来なければ、君の負けだ」
私の言葉。「勝負に勝ったらどうなる」
ゾガールの余裕の声。「その時は望むものをくれてやろう。勝たない限り、君には我々の研究に協力してもらう事になるよ」
私が笑った。可能性。私の自由。
「私が勝った時には立宮堂一の情報を頂こうか」
静まり返る。
沈黙。
動揺。
不可思議な空気。
立宮堂一を知っている。立宮堂一と繋がっている。
ザウバーの声。「君が勝てたら誰の情報でも差し上げよう」
私が微笑む。俺が笑う。
私の声?「それと、君達の命をね」
彼らの笑い声が部屋の中に響く。
所長。「面白い冗談だな」
私の中の嘲り。
標的の確認。
複数犯の場合はその全てを。
始末する。




