表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
朧時 ~終わりない夢~  作者: 佐治道綱
第三章 次元実験体
20/48

19:「タイムパラドックス」




 日々の研究。論議の時間。


 討議の会場。日本政府の科学研究所。白く広く暑い部屋。


 太陽に照らされているかのよう。熱い空気。


 部屋の中。灰色の衣服を着た大勢の研究員たち。私の色も灰色。


 白衣を纏った数人の研究員たち。科学者、若しくは医者。


 黒衣を纏った屈強な研究員たち。警棒を持ち、灰色を睨み据える。


 私の顔を覗き込むチェーネレ。


 「どうだい?結構楽しそうな雰囲気だろう?」


 私の応え。「そうだな。可笑しな光景だ」


 満足げに微笑むチェーネレ。イタリア人。純粋なイタリア種。


 白く広い部屋。正面には大きなホワイトボード。議題が書き込まれ、それについて灰色の研究員たちが意見を言い合う。意見。思うままに言葉を吐く。意見の食い違い。相手を罵る。取っ組み合いに発展する。くだらない論議。


 灰色の研究員たち。様々な人間。老若男女。子供もいる。老人もいる。


 怪物の色の眼をした人間もいれば、普通の人間もいる。




 くだらぬ議題。過ぎ行く日々。


 殺人について。人種問題について。日本の政治について。


 様々な意見が飛び交う。様々な声が飛び交う。


 くだらない。


 人権問題について。恵まれない人々について。戦争について。


 様々な声が飛び交う。怒声。泣き声。笑い声。罵声。悲しげな声。


 クダラナイ。クダラナイ。


 私が私の中に沈んでいく。


 冷めた感情。冷めた心。




 チェーネレの陽気な声。「ほらほら!楽しいだろ」


 笑いを堪える俺の声。「ああ。とても笑える光景だな」




 くだらぬ議題。過去と未来。


 タイムトラベル。タイムパラドックス。


 相対性理論。物理学。因果律。


 タイムマシン。過去への旅。未来への旅。人生のやり直し。


 様々な意見。様々な夢。様々な願望が飛び交う。


 チェーネレの声。「タイムマシンって、いつの時代になったら完成するのかな?」


 俺の声。「くだらん。タイムマシンなんて実現不可能な代物だ」


 ホワイトボードの近くにいた初老の男性がこちらを向いた。


 初老の男性。「何故、実現不可能だなんて思うのだ?」


 「過去になんて行けるとしたら今までのもんが全て狂っちまうだろ?」


 「君は親殺しのパラドックスの事を言いたいようだね」


 親殺しのパラドックス。過去へ行き、自分の両親を殺す。自分は生まれてこない。存在の矛盾。変わってしまう歴史。世界の矛盾。自分が生まれてこなければ、両親を殺しに過去へ行く事も出来ない。古く有名なパラドックス。延々と続くパラドックス。無限の輪。


 俺の声。「そんなもの持ち出さなくても実現不可能なんだよ」


 初老の男性。「多世界論というものがあるのだよ、君」


 多世界論。多歴史論。パラレルワールド。多数の独立した世界。別の世界。


 クダラナイ。こんな話をするべきではない。


 俺の声。「それこそ有り得ない話だって理解しろよ」


 「何故、有り得ないなんて思うのだ?近年では多世界を観測する研究も進められているのだ。科学は常に進歩している。不可能だと思われていた事が可能となるのだ」


 ジツニクダラナイ。ハナスベキデハナイ。


 ワタシはオレを深い底へと沈めようとした。


 初老の男性の声が響く。


 「君はザウバー・ヴァンデルの論文を読んだ事がないのかね?」


 頭の中が静まる。頭の中を俺が支配する。


 俺の静かな怒り。「他人の意見をお前の意見のように言うんじゃねえよ」


 目を剥く初老の男性。


 俺の激しい怒り。「お前の意見なら、お前の考えをお前の言葉で語れ」




 クダラヌ論争。クダラヌ口論。


 喧騒。怒声。


 灰色がざわめく。黒が鎮圧する。


 論議の時間。





評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ