0:「昔見た夢」
誰もいない。
綺麗な街並みと地平線へと続く道。
空は晴天、しかし薄暗い。
薄暗い空に太陽が浮かんでいる。
街の鉄塔がオレンジ色に煌く。
何かがおかしい太陽の光。
まるで作り物の太陽。
道を進む。
歩いているというよりも周りの風景が流れていく感覚。
山の緑。美しい光景に心和む。
街は山の斜面に並び、道も山の上へと続いていく。
道を登る。
どこまでも行ける道。
街は消え、緑も消え、道も消えていた。
太陽の向こう側だ。
そこには青と白だけ。
果てしない空が広がっている。
美しい青空、白い雲。
空の窓が浮かんでいる。
空の窓に立ち、どこまでも広がる空を眺めた。
ここには上も下もない。
右も左も意味をなさない。
空の寒さを感じ、日差しの暖かさを感じる。
空はとても明るいが、そこに太陽はなかった。
囁く声が聞こえる。
「ようやく来たね」
空の窓の向こう側だ。
声は響く。
「あなたは本来こっち側の人なんだよ」
姿は見えず、窓の向こうには空があるだけ。
声は誘う。
「早くこっちへ」
足を踏み出そうとすると、空の様子が一変した。
空の窓の向こう側。
空が流れる。
落ちていく空。
いつか見た風景。
しかし、違う場所。
「それはそうだよ」
声が囁く。
「ずっと昔に見た夢だからね」