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RPG・ロールプレイ  作者: 光露
4/12

俺とアイツ

「ほら、お前の分」


近くまで駆け寄った俺に向かって、ライクスはゆるりと腕を揺らして剣を投げ渡してくる。


「うわっとっと、危ないなぁ。投げて渡すなよ」


極めてゆっくりと回転も無く飛んで来た剣だが、俺は反射的にそれを避けてしまい、剣はそのまま軽く地面に突き刺さった。軽く愚痴りながら、足元に落ちたそれをひょいと持ち上げ、刃についてしまった土を指で丁寧に拭い落とす。


刃物は投げて渡さず、丁寧に手渡しをする。常識だろうが。はさみ然り、包丁然り、だから剣もそうするべきだろ。


しかし、どうやらそう思っているのは俺だけのようで、見ればミルカもライクスも変なものを見たような顔をしている。


「ん?どうかしたか?」


なんかおかしな事でもしたか?と思い、ミルカとライクスに問うが、二人とも再び顔を見合わせるばかりだ。しかしそのまま無言で問答を行う訳にもいかず、むすっとした表情で先を促すと、ライクスが口を開いた。


「なぁ、お前この短い間で変な物でも食ったか?口調もなんだか変だが、何よりあんな剣をちょっと投げただけで危ないとか言う様な魂してたか?」


「うん、私もちょっと変だと思う。ついさっき…苦しそうにする前くらいまではいつも通りだったと思うんだけど。今のシグレは、ちょっと違和感かな?」



おおっと?意外な事からいきなり疑われたな。さっきまで普通のテンションで突っ込まれなかったから大丈夫かな?とか思ってたけどやっぱり今の俺は以前の元主人公アイツとは違和感があるよな。そもそもアイツ一人称僕だったし。こちらに来てから未だ幾ばくも経っていないっていうのにいきなり先行き不安な展開だな。


こぼれてしまいそうなため息をグッと飲み込み、頭の中で返すべき答えをゆっくりと模索していく。そして答えは、意外にもあっさりと出た。


「分かった分かった、それについては後で話すから、とりあえず今は行こうぜ?」


そう言って大仰に身振り手振りをして早く行こうと促す俺。結論として、俺がとった選択は言ってしまえば問題の先送りである。今、良い答えが出ないなら明日の俺に期待すれば良いじゃない?ってくらいの丸投げな策。付け足すとすればこうやってあしらい続けて時間がうやむやにしてくれるのも若干狙ってるくらいか。


「後でって、別に今歩きながらでも…「行こうぜ!」いやだから…「行こうぜっ!」……ああ。」


「珍しくライが押し負けた!?」


グッと親指を立てた右手を勢いのままにライクスへ突きつけ、ゴリゴリと押し込めば不承不承といった感じの肯定を勝ち取る事に成功する。そのことに満足した頷きを一つ、早速ミルカの薬草採取の場へ向かおうと踏み出した足が、ここにきてぴしっと止まる。


「どうした?」


今度はライがそう聞いてくるのに、俺は油の差していない機械のような動きでギギギとゆっくり振り返る。


「どこに行けばイインダッケ?」


「いや、だからまずはミルカの薬草摘みに付き合うんだろ?」


「うん、いや、だからさ、ドコニイケバイインダッケ!?」


「はぁっ!?」


もう何が何だか分からないと荒く髪を掻き、頭を抱えてしまったライクスに、ミルカが代わる。


「もしかしてシグレ…、場所を覚えて無いの?」


「ウン!ソウダネ!!」


「私と何回も行ったのに?」


「ウン!ソウダネ!!」


「今日になって?」


「うん、そうだね…」


なんとか押し流してしまおうとしていた俺のテンションも質問される毎に下がり、最後には完全に失速してしまう。


いやいや、だってこんな場面ゲームで無かったもん。ストーリー的には、ライクスが戻って来て少ししたらモンスターが来て最初の戦闘とチュートリアルが始まるんだよ?それなのにまだ来てねぇんだもん。あれか、誤魔化すために会話早めに切り上げたからか。


どうしようも無い状況に、俺の頭は空転し、堂々巡りの言い訳を繰り返すばかり。取り繕いようも無い程明らかに不自然な俺に二人のジト目が突き刺さり、背中には暑くも無いのに汗が流れだした。

妙な間が生まれ、変な空気になりつつあったのを「ねぇ、シグレ…」とミルカが口火を切る。


「どんな理由があったとしても、大変な時は相談するってことが大事だと思うの」


「そうだぞ、俺らはどんな時でも力になってやるから、何かまず話してみてくれないか」


「いや、話せと言われても…」


そう言ってフッと微笑む二人の目は、先程までのジト目から仕方の無い幼馴染へ向けるような慈愛に満ちた目に変わっている。


(あれ、なんだかいつの間にか俺が物凄く何か大きな問題を抱えている感じで扱われている?)


どうやら言えない事を誤魔化していたのが秘密を隠している態度だと思ってくれたらしい。ただ、そんなこと言われてもな…。


「じゃあ、真面目に言うから笑うなよ?」


「もちろん」


「当たり前だ」


きっとダメだと分かっているが、仕方が無いと、一度大きく息を吸い込んで二人を見据える。



「俺、実はシグレじゃなく、違う奴なんだ」



意を決して発した言葉に二人は固まり、『はい?』とばかりにポカンとしている。


「えっと、言葉が足りなかったか。体はシグレのままだけど、中身は違うというか」


反応が今一つな二人に、慌ててさらに説明を付け加えるが、それでもあんまり理解してもらえた様子は無い。というか、だんだん可哀そうな人を見る目でこっちを見始めている。


「そっかぁ、そんな変なことを言ってまで話したくない事なんだね。いいよいいよ大丈夫、いつか話してくれれば良いから」


「まぁ、そういうことだな。なんだか知らないが、お前がやりたいようにすればいいさ」


うんうんと二人は何故か頷きあいながら、背中を軽く叩いて来たり、頭をグリグリ撫でてくる。


「だぁーーーもう止めろ!!違うから、本当だから!」


二人の手を強引に引っぺがし、むきになって否定するが、そうすればするほどまるで照れ隠しに喚く子供のように捉えたのか幼馴染二人は微笑むばかりで、その後もまともにとられることは無かった。




「はぁ、全く」


否定するのも疲れ、ため息ひとつついて軽くだれる。


まぁ、こんなことは分かっていた事だ。本当の事を言ってみても伝わるはずは無い、けれどこれで当分俺が普通にしてても問題無いはずだ。



「…ぶん、さっき……ら降りた後苦し……にしてたからその時に」


「記憶喪……、いや……の混濁の方かな。俺たちの名…とか普通に…えて…し」


少し離れたところで相談する二人の話声は聞き取り辛いが、どうやら俺がおかしいのは記憶の混濁なんていう所に落ち着きそうな感じだ。あの時、恐怖でちょっと倒れかけたのもいい感じに働いているらしい。


そうして二人を眺めていると、不意にその後ろの茂みが動いた。


(はぁ、来るのがちょっと遅いんじゃないかな?)


足元に置いていた剣を掴み、腰を上げようとした瞬間、俺は肉体から再び切り離された。


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