第50話(3-10) 地下迷宮のネズミーランド
翌日モレル商会を訪れた俺を待っていたのは少々厄介な事態だった。
要約するとこうだ。
帝都には上下水道が整備されており、下水道は地下に巨大なダンジョンのように形成されている。そんな地下下水道に最近巨大なネズミがどこからか住み着いたのだ。その巨大ネズミは多くのネズミを統率して夜な夜な街の食料庫を荒らしているとのことだ。
モレル氏は市場の理事長だったので、この問題を片付けなければ帝都を離れられないとのことだ。もっとも理事長の後任は既に決まっているらしいが。
「それならいっそ、後任に全てお願いしてもよいのでは」
「そういうわけにはいきません。私の任期中に私を頼ってきてくれたのですから」
なるほど義理堅い、組合員からの信が厚いのも頷ける。
「軍隊は動いてくれないのか」
「それが被害は限定的との理由で却下されてしまいました」
あきらめたように首を横にふるモレル氏。
「彼らの本音は薄汚いドブ掃除などまっぴらゴメンだ、ということです。たいした手柄にもなりませんし」
なるほど、文字通りの意味で汚れ仕事というわけか。
「わかった、なんとかしよう」
「本当ですか!」
「そうでなければ出来ないと言うのならやるしかない」
こうして地下迷宮に潜む巨大ネズミの討伐が始まった。




