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異世界転生アンチーレム  作者: MUR
第2部 帝都到達編
31/53

第29話(2-17) スパルタ式防衛戦 決着

「ふはは、帝都攻略第二師団指揮官、このインディグラス相手に勝てると思うたか」


強烈な一撃が振り下ろされる。


「ガギィィィンンン」


ドラゴンファングでかろうじて受け止める。


「ぐぅっ」


なんという重い一撃。


身体強化10倍でもとうてい耐えきれない。


(それなら……)


敵の巨大な直剣を捌き、ドラゴンファングに魔力を注ぎ込む。


イメージするのは空気の刃。


(真空刃一閃)


見えざる風の刃が敵の巨体を一文字に切り裂く、はずだった。


「バシィィンン」


相手もまた見えざる障壁を纏っている、そう思わずにはいられなかった。


2度も防がれたとなればこれは偶然ではない。


何らかの魔術的防護を備えているとしか考えられない。


「クッ」


単純な膂力でも魔力的攻撃でも倒せないとなるともうこれは相打ち狙いしかない。


「ぬはは、どうした急にだんまりか、これしきの攻撃で手詰まりか」


ニィッ、とインディグラスが牙を見せて笑う。


「もっと俺を愉しませろぉぉ」


一撃、二撃、三撃、と攻撃を重ねてくる。


「グッ」


あまりの重さに圧倒される。しかも無暗やたらな攻撃では無く、剣術の基礎を踏まえている。

それ故、相手の懐に安易に飛びこむことすら出来ない。


(ここまでか)


こうなれば、相手の体に直接魔力を流し込み、内部から破壊するしかない。


つまり懐に飛び込み、相手の急所にドラゴンファングを突き刺すのだ。


今の力量差でそれを行うということは、すなわち俺自身の死を意味する。


(片腕を犠牲に飛び込むしかない)


あとは敵の魔力的防護が武装によるもので、先天的な体質ではないことを祈るだけだ。


この点でもかなり分の悪い賭けと言える。


(すまないな、アンリ)


俺は覚悟を決めた、次の振り下ろし攻撃のタイミングで飛び込む。



が、そのタイミングは永遠に訪れなかった。


後方から黒い大きな影が翻り、その上に乗る人物が相手の上段の構えを弾いたのだ。


「アンジェラ!」


その豊かで艶やかな黒髪は今は兜に覆われているが、振るう槍捌きは見間違えがなかった。


「諦めるな!お前が私にそう教えたのだぞ!」


槍を投げつけ、馬から俺のそばに降り立つ。


「いいか、奴の防具には魔術的防護がかけられている。それの限界を超える威力で攻撃しなければ、通じない」


ドラゴンファングの持ち手に手を添えてくる。


「私が魔力の変換を受け持ちます。キリヤは風の刃を最大出力することに集中して下さい」



「ふん、つまらん邪魔が入った。ひと捻りにしてくれるわ!」

「うらぁぁぁぁ」


下知とともに距離を詰めてくる。後方の敵軍もそれに呼応して突撃を開始した。


「焦るな、ここで倒れれば味方は総崩れだ」


アンジェラが俺に語りかけてくる。


自分の魔力がアンジェラに注ぎ込まれるのを感じた。

それに応えるようにドラゴンファングが微振動を開始する。

かつてない魔力がアンジェラを経由して、貯めこまれる。


見えるはずのない真空の刃が剣を中心に渦増いているのを幻視した。



「グルルァァァ!!!」


眼前に迫るインディグラス。

振り下ろされる最大の一撃。


「「ここだ!!!」」

二人同時に剣を突き出す。



荒れ狂う真空の竜巻。


そこには何も無くなっていた。


敵将も、敵軍も、渓谷すらも。


俺たちを起点にして、円筒が空に伸びていくように、その通り道であった全てを巻き込み、えぐり、削り、消し去った。


「勝ったのか?」


味方の一人がそうつぶやくほど誰もがあっけにとられていた。





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