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異世界転生アンチーレム  作者: MUR
第2部 帝都到達編
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第28話(2-16) スパルタ式防衛戦 その三

 かくして峡谷において両軍が対峙した。


 高速道路ほどの道幅にそれぞれの兵士がひしめき合う。


 出発前にヤシマが教えてくれたところによると、オーガはアジンの中でヒトに近い種で、オークを凌ぐ戦闘狂らしい。


 もうすでに、お互いの武器がはっきりと見て取れる距離まで接近している。


 敵軍の中から額に見事な一本角を生やした鬼が進み出てきた。

 指揮官だろうか。


「愚かなるヒトよ! われらの軍勢を見るがいい! 勝敗はすでに決した! 今すぐ降伏するのだ! さすればせめてもの慈悲として苦しまずに殺してやろう!」


「断る!」


 こちらの先頭でド・ゴールが叫んだ。


「無謀と勇気の違いがわからぬのか? 小ざかしいだけの弱きものどもよ。かくなるうえは楽には死なせん。少しずつ体を切り刻み、恐怖と苦しみでもだえさせてやろう。その声をマーチにわれらは進撃す……フンッ」


 俺は意表をついて真空の刃を放った。

 しかし、何か見えない壁にぶつかった様に打ち消されてしまった。


 ギロリと敵将が俺をにらみつける。


「バカめ、おまえのことは報告にあがっておるわ。あなどるなよ。それほど死に急ぎたいのであれば是非もなし」


 そこで敵将は言葉を区切り、息をためた。


「殺せぇぇぇぇぇ!!!」


 それを合図に地鳴りがこちらへと迫ってくる。



「第一隊列!構え!」


 ド・ゴールの指揮を受け、最前列の部隊が『ザッ』と盾を構える。さながら一枚の壁のようだ。


 槍を突き出し敵の攻撃に備える。


「来るぞ!ひるむな!」


 襲いくる敵を迎え撃つ自軍。


 とうとう両軍がぶつかった。


 道幅いっぱいに広がったファランクスが敵軍の突進を受ける。

 その勢いに押され最前線の部隊が二メートルほど押し込まれる。


 ああ、このままなすすべもなく敵の軍勢に押しつぶされるのか。


 いやちがう。


 こちらの隊列は見事に踏みとどまっている。その陣形はまったく乱れず、誰一人ひるんでいないではないか!


 いける。


 俺はその光景を見て勝機を感じ取った。


「押しかえせぇぇっ」


 勢いを殺された敵の第一波は槍の攻撃を受けて総崩れとなってゆく。

 だが第一波の攻撃を乗り越え、敵の第二波が襲ってくる。


「前衛代われ!」


 ド・ゴールの号令で、第一列が後退し、無傷の第二列が前へ出る。


 先ほどと同じように受け止め、痛烈な反撃を加える。

 

 どんなに複雑な戦闘も根っこにあるのは数の単純な押し引きだ。

 自軍の兵力が少なければ、戦闘地域を限定して、敵の戦力を遊ばしてやればいい。

 逆に、敵軍が少なければ、周囲を取り囲み四方八方から攻撃を加えてやればいい。


 

 第六波。第七波。第八波。


 オーガは数に物を言わせて突っ込んでくる。


 第十六波。第十七波。第十八波。


 戦闘開始から既に二時間が経過していた。



 まずいな。

 俺はここに来てあせりを感じ出した。

 通常ヒト同士の戦闘であれば、損害を気にしてもっとペースが落ちるはずだった。突撃ばかりを命令する指揮官に対し、相手側の内部分裂も十分期待できる。


 しかし、オーガの軍には一切の迷いが無かった。

 

 損害を気にしたり、命を惜しんだりする様子がまったく無いのだ。


 ひたすら、猪突猛進を繰り返してくる。


 こちら側にも被害が出始めた。

 兵の疲労も蓄積されている。


「もういいだろう。頃合だ。大将同士で決着をつけようぞ」


 敵軍の攻撃が不意に止むと、大将の一本角が前へと歩み出た。


「望むところだ」


 俺はドラゴンファングを携えてそれに応える。


 両軍の取り巻きからやんやとはやし立てる声があがる。


「帝都攻略第二師団指揮官、憤怒のインディグラス」

「異世界の旅人、キリヤ」


「わが刀の錆となれ!」

「ここは通さない!」


 一騎打ちが始まった。

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