第3話 少女と旅に出るけどロリコンじゃないです
さて、話は俺の転生から半年飛ぶことになる。
半年の間、偶然助けた少女、アンリの村に居候したり、村を襲ってきたオオカミを撃退したり、略奪に来た野党を返り討ちにしたり色々あった。
どれも結構ギリギリ、悪戦苦闘だった。
よって全カット。
まぁ、初めて動物を殺した衝撃とか、正当防衛とはいえ人を殺害してしまった葛藤とかあるのだが、それはまた別のお話。
有り体に言えば、この世界に慣れたのである。
そのおかげでいくつかのチート能力を把握、駆使できるようになった。
「キリヤー! そろそろ帰ろうよ」
アンリが畑の縁から、俺を呼んでいる。
そのおてんばぶりに若干あきれながら返事をする。
「すぐ行くから、大声だすな」
「わかった、待ってるー」
アンリは大声で応える。
絶対分かってないだろ。
俺はドラム缶ほどの籠を背中に背負い立ち上がる。
中には芋(じゃがいもによく似ている)が山盛り入っている。
それを溢さないように畑の畔道へと向かった。
「遅いー」
あぜ道でアンリが急かす。
「中身がこぼれてもいいのか」
たしなめると舌をペロッと出しながら、
「お父さんに怒られるからそれは困るな―」
と言って、道を並んで歩きだす。
大体アンリは俺の十分の一ほどしか運んでいない。
「キリヤはホントに力持ちだからね」
「あぁ、頑丈に出来てるからな」
実はこれもチート能力の恩恵だったりする。
成人男性の2~10倍まで力を自在に制御することが出来るのだ。
「また肩車してね」
無邪気に頼んでくるアンリ。
「ダメだ」
即、拒絶する。
「いいじゃん、ケチ―」
不満をあらわにするアンリ。
「お前11歳だろ、そういうのは卒業だ」
アンリはちょっとというか、かなり頭の中がお花畑なのだ。
だいたいこの世界では13~18までには、結婚して子供を設けるのだ。
助けたせいで変に懐かれてしまった。俺が原因の一端かと思うと何故か罪悪感を感じてしまう。
「ただいまー」
アンリは帰宅を元気に告げた。
俺が入りやすいよう扉をささえて開けてくれている。
こういうとこは可愛いのに。
ちなみにロリコンではない。
夕食後、アンリの父親、家長が俺にある提案をしてきた。
「アンリを連れて街に旅してはどうだろうか」
ちなみに、街までの旅費だけは出してくれるが、そこから先は自分で何とかしてくれ、ということだ。そう語る父親から含まれた意図を、俺は察した。
薄情な気もするが、この家の厳しい家計事情を考えるとこれでも、大出血だろう。
ここでカントリーライフを続けても、糸口を掴めないのも確かだ。
「アンリはそれでもいいのか」
一応意思確認してみる
「うん、初めて街に行くの楽しみ―」
やはり頭が残念な娘だった。ずっと前から街に憧れてたのはいいが、いくらなんでも軽すぎないか。
こうして三日後、アンリと俺は旅立つことになった。
この辺境の村から一番近くの街まで二週間はかかる。
持ち運びできる粗末なテントと寝具、簡単な調理器具と食器類、長期保存可能な食糧をやたらでかい袋に詰める。
ちなみにやはり持つのは俺だ。アンリには被服などの出来る限り軽いものを任せた。アンリは身軽ではあるが、身長も低く、大きくて重い荷物を任せることはできない。
三日後。
旅立ちの日。
「おみやげ楽しみにしてねー!」
最後まで能天気なアンリ。
「お世話になりました、このご恩は絶対に返しますので」
アンリの両親と兄、姉、弟の5人に深々と感謝を述べ、早くも先行しているアンリの元に急ぐ。
こうして俺の旅は始まったのだ。