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異世界転生アンチーレム  作者: MUR
第2部 帝都到達編
24/53

第23話(2-11) 温泉に行こう!

「なんで俺が行かなきゃいけないんだ」


 俺は馬上で思わずぼやいた。


「困っている人は助けてあげようよ」


 俺の背中に抱きついているアンリがそれを聞きとがめる。


「まぁ、もうすぐ冬が来るんだから稼ぐのはいいことだよ」


 少し先行しているベルが馬上から俺に話しかける。


「確かにそうなんだが」


 俺たちは領主オーガスタス・ド・ゴールの依頼を受け、敵の残党狩りに出かけている。

 本来これは街の正規軍の仕事のはずだ。

 しかし先日の戦闘で破壊された城壁の修復に人員を取られてしまい人手不足なのだ。


 男一人、女三人、その他一匹というのはいささか緊張感に欠ける。

 

 俺の力量を信じているということだろうか。

 だが真の理由は別にある。

 敵がたむろしている周辺は温泉のスポットなのだ。

 なんでも入ると美人になるらしい。

 三人はそれを聞いた途端一緒に行くと言って譲らなかった。


 馬に揺られて約二時間。


 ゆで卵の匂いをキツくしたような硫黄臭が次第に強くなる。


「三人はここで待機してくれ。俺が様子を見てくる」


「わかったー」


 アンリが答える。


「早くしろよ」


 ベルが急かす。


「お気をつけてください」

 

 ヤシマが注意する。


 三者三様の受け答えに見送られた。



 俺は湯気の立ちこめる山道を20分ほど登った。

 段々湯の流れる音が大きくなってきた。

 いよいよだろうか。


 俺は息をひそめ、前方の大きな曲がり角の陰から様子を伺うことにした。


 そこには見事な天然の露天風呂が広がっていた。

 小さな体育館ほどの広さがあるだろうか。

 乳白色の湯からは湯気が立ち上り、絶え間なく湧き出ている。

 

 問題はそこで数十頭のグールが入浴していることだ。

 グールはヒトに似てヒトならざる者。アジンの一種だ。肌は土気色をし、手には鋭いかぎづめが生えている。頭部に髪はなく醜い皺に覆われている。

 地下に住むヒトが変化した姿とか、一度死んだヒトのなれの果てとか言われている。

 ケモノやヒトの死肉を好んで食べるらしい。


 俺は曲がり角から勢いよく躍り出た。


「俺はキリヤ、佐藤キリヤだ。敵将ボルボトスを打ち取りし者!」


 大声とともにドラゴンファングを抜き放つ。


 あたりは蜂の巣をつついたようになった。

 みな我先に湯からあがる。

 ある者は逃げ出し、ある者は岩陰からこちらを伺い、ある者はこちらに向かってきた。


 俺はゆっくりと目を閉じる。


 明鏡止水。


 あらゆるものを切断する必殺の一撃をイメージする。


 指輪が赤く光り熱を帯び始める。

 それに呼応するようにドラゴンファングが淡く輝きだす。


 斬。


 俺は空中に横一閃を放った。


 露天風呂は学校のプール以上の大きさがある。

 俺のいる場所の対岸で見えない斬撃を受けた大岩が真っ二つになる。

 重さで斬られた上半分が滑り落ちる。

 岩陰に隠れていたグール達は一目散に逃げ出した。

 俺に向かってきたグール達も発生したかまいたちに吹き飛ばされる。

 どうやら上手く制御できたようだ。

 せっかくの観光スポットをグールの死体だらけにせずに済んだ。

 だが勢い余って湯船のお湯も吹き飛ばしてしまった。


 しばらく後、俺はみんなを呼びに行き、再び露天風呂に戻ってきた。

 お湯も次第にたまり始めている。


「じゃあ、私たち向こうで準備するから」


 ベルが対岸の岩陰を指さして言った。


「おう」


 俺は内心ドキドキしながらも平静を装った。


 ちなみにこの世界では基本的に混浴かつ全裸がデフォらしい。

 日本のように男女別でもないし、海外のように水着着用がマナーという訳でもない。


 俺は服と荷物を馬の背中に預け、曲がり角にその馬をつないだ。


 風呂桶とタオル類、せっけんを持って湯船に近づく。

 何度か、かけ湯を行い、乳白色の湯に体を沈める。


「極楽極楽」


 実におっさんくさい独り言がもれる。

 思えばこの世界にきてから数えるほどしかじっくり湯につかっていない。

 


 しばらくして湯気の向こうから話し声と三つの影が近づいてくる。

 背中を向けようとしたが誘惑に負けガン見してしまう。


 大きさから判断するに、左がベル、真ん中がアンリ、右がヤシマだろう。


「ベルとヤシマ、私よりおっきい」


 アンリの無邪気な声。


「そりゃアンリよりはね」


 ベルが苦笑しながら答える。


「大丈夫です。すぐに私より大きくなりますから」


 ヤシマがアンリに語りかける。


 くそ、距離と湯気のせいでしっかり見えねぇ。


「あっ、キリヤだ!」


 バシャバシャさせながらアンリが近寄ってくる。


「とぅ」


 そのままタックルをかましてきた。


 意表を突かれた俺はタックルを受け、湯の中に沈む。


 溺れる! 溺れるから!

 ゲホゲホと激しくむせる。


「おもしろーい」

 

 アンリが俺の腕に抱きついてくる。

 微かな胸のふくらみとアンリの乳首の感触がはっきり伝わる。


 が、いかんせん子供なのでそんなに興奮しない。


「……」

「……」


 少し離れた場所からヤシマとベルが「死ねばいいのに」、みたいな目でこちらを見ている。


 いや、俺は悪くないだろ。

 それはそれとして、アンリのサイズはおそらくAカップだろう。トップとアンダーを計ってないのであくまで推測だが。



「アンリは肌も乳首もキレイだね、うらやましいや」


 ベルがアンリを触りながらうらやむ。


「ベルもキレイだよー」


 アンリが仕返しとばかりにもみ返す。


「それにベル様もまだまだ大きくなります。私の成長は既に止まってしまいましたが」


 ヤシマのフォローが入る。


 ヤシマはCカップぐらいだろうか。美しいお椀型で見事なバランスを保っている。もっとも正解に近いと言ってもいいぐらいだ。


 対するベルはちょうどアンリとヤシマの中間、推定Bカップだ。

 小ぶりで物足りないかもしれないがダメ出しするのはまだ早い。

 仕事柄ヤシマの大胸筋と小胸筋はよく鍛えられている。そのおっぱいは張りがあり、つんと上向いている。その健康的な美は三人の中で一番だろう。



 俺は今まで出会った仲間たちに思いを馳せた。

 ポートス領主代行ジャンヌ、推定Eカップ。女盗賊エダ、推定Fカップ。姫騎士アンジェラ、推定Gカップ。

 

 今までの数々の出会いで俺は強く成長している。


 ……ちなみにこの後のぼせた俺は三人に散々バカにされるのであった。



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