第1話 嫌いな異世界に強制転生
???「佐藤君!あぶないでやんす!」
「え?」
キキ―ッ!
ドーーン!
こうして俺はトラックに引かれ無事死亡した。
……。
俺は異世界転生チーレム無双が大嫌いだ。
なぜかって?
愚問だな、それは猫も杓子も異世界転生物ばかりもてはやすからだ。
俺が好きなアニメはビッグ・○ーみたいなロボ物や、涼宮ハ○ヒの憂鬱みたいな学園物なんだ。
……。
だがそんな俺が今、拷問にかけられ異世界に転生させられようとしている。
……ブッダはゲイのサディスト、間違いない。
あいにく俺の目の前にいるのがブッダでは無く、ゴッドなのが残念だ。
「汝、自らの犯した罪を認めるか?」
「俺は悪くねぇ!」
無駄とは知りながら強がってみせる。
ちなみに俺は絶賛拘束されている最中だ。
座っているのはえらく年季の入った木製の椅子だ。
正方形を組み合わせたような構造の上に、体に触れる背中や尻、ひじ掛け
部分がことごとく冷たくて固いので座り心地は最悪である。
まぁ、そんなことは些細な問題だ。
俺は革製のベルトで首、二の腕、手首、太もも、足首をがっちりと椅子に固定されている。
対照的にゴッドを名乗る存在は10メートル程離れた正面にゆうゆうと座っている。
5メートルはあろうその巨躯はそれだけ離れているにも関わらず凄まじいプレッシャーを放っていた。
大理石で出来た椅子に腰かけ、俺を見下ろしている。外見はゼウス像そのままといって良いだろう。
人間で言うならば50歳前後、もじゃもじゃの髪の毛が長い顎髭と一体化している。
こちらから見て、右の肩からゆったりとした布の服を斜めに掛ける形で纏っている。
そのせいで大胸筋はそのほとんどが丸見えであり、しかも見事な筋肉だった。
そして極め付けには、玉座と全身は金色の光を放っていた。
分かりにくい人は、楽園○放の尋問シーンを思い浮かべてくれればだいたい問題ない。
ふたたび巨人が口を開いた。
「汝は異世界転生物を心底嫌っている、これは相違ないか?」
「ああ、間違いない」
「では何故、今期のアニメ、このす○、灰○のグリムガルとGA○Eを視聴しておるのだ」
「うっ」
痛いところを突かれた、流石全知全能の神、そんなことまで知っているのか。羽川さん涙目だぞ。
「いやでもG○TEは今のところ一期の方が面白くて微妙……」
「黙れ!」
ゴッドが一喝すると、雷でも落ちたかのように、周囲の空気が振動する。
さしずめ神のいかずちといったところか。某ダメ提督製造機とはとくに関係ない。
「面白いから、見る。それだけのことであろう」
「いや、だがしかし……」
なおも俺は食い下がろうとした。
「これ以上偽りを重ねるならば、汝の望み通りしてやろう。エンドレスエイトをエンドレスエイティーンにして来期に放送することも可能なのだぞ」
なんだその拷問は。しかも全18話すべてエンドレスエイトとか1クール12話を余裕でオーバーしてるじゃねえか。特別編とOVAまでやっても足りんぞ。
そんな暴虐を見逃す訳にはいかない。俺一人の身で大勢が救われるのなら、人柱となろう。
「分かった認める、異世界転生物にも面白い作品はたくさんある」
ゴッドはそれを聞いて満足したようだ。ご機嫌で顎鬚をなでている。
「そうだろうそうだろう、やはり儂の見立ては間違っていなかった」
「それでは汝をそのファンタジーの異世界に送り出してやろう」
「ちょ、待てよ!」
ゆで理論もびっくりの超展開である。
「大丈夫じゃ、お前にはありったけのチート能力を与えてやる。もちろん詳しい内容は教えてやらんが」
なんだよ、その投げっぱなし、う○きの法則かよ。プラスはいったいどんな話だっけ。
「もしこれ以上駄々をこねるようならば、それ相応の罰を下さねばならぬ」
「一体どんな……」
ごくりと唾を飲み込む。
「指と爪の間に一本づつ縫い針を差しこんでやろう」
わあい、これ、賭博破戒録カ○ジに出てきた奴だー、見たことあるぞ。死にはしないが超絶痛そうだ。
「どうやら覚悟は決まったようじゃの」
ゴッドは咳払いをすると宣言した。
「ゆめとぼうけんと!ファンタジーのせかいへ!レッツゴー!」
「うわあぁぁぁぁぁぁぁぁ」
ガバッと足元の床が開き、俺は椅子とともに落下していった。