6話 入学式(後)
漓霧に連れられて、
私は入学式の会場へと歩いていく、
漓霧は私の横で楽しそうに喋り掛けてくれる。
きっと漓霧は、
私が不安にならないように気を使ってくれている
入学式の会場に着いてからも
私たちは楽しくお喋りをして、
今日朝から不安だった私の心は、
いつの間にか落ち着いていた。
これも漓霧のおかげだ。
会場に着いてしばらくたった私たちは
先生の誘導に従い、
列に並んで入学式の会場へと入場していく。
席に向かう途中に漓霧のお母さんが
笑顔で手を振ってきた。
隣に一緒に歩いていた漓霧は
少し照れくさそうだったけど、
漓霧はお母さんに小さく手を振っていた。
私は会場の席に着席し、
漓霧は私の横に座った。
漓霧は席に座った私と手を繋いでくれた。
漓霧は私に凄く優しい、
今だって私のこと心配して手を繋いでくれるし、
それに私のことを一番理解してくれる。
今日から新しく始まる高校生活、
私は漓霧に何ができるんだろう
入学式は着々と行事が行われていく。
校長先生による式辞
生徒会からの歓迎の言葉
新入生代表による宣誓
どれも私にとってはつまらない行事。
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入学式が終わり、
各クラスごとに整列して先生の誘導に従い
それぞれの教室に歩いていく。
私たちも列に混じって自分たちの教室へ向かう。
新しい教室。
中学の時とは違って、少し大きめな机と椅子。
これからの新しい高校生活を
予感させる先生とクラスメイトたち。
私一人だったら前を向くことができず、
教室に入ることができなかっただろうけど。
今、同じクラスに親友の漓霧がいる。
彼女がいてくれるだけで私は救われる。
私たちはそれぞれ自分の席に着席し、
これからの高校生活について
先生から説明を聞いていく。
説明の途中何回か漓霧と目が合って
彼女はそのたびに笑顔で答えてくれる。
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先生の説明が終わり、
今日の入学式の項目は全て終わった。
私は自分の席を立ち
漓霧に声を掛けようとしたけど、
生徒たちに阻まれてしまった。
漓霧の周りには彼女に
興味を持った生徒たちで
人だかりが出来ている。
生徒たちはそれぞれ、
名前とか、どこの中学から来たの?とか
色々漓霧に質問していた。
やっぱり漓霧は
このクラスでも目立つんだなぁ。
なんだか中学の時、
私のクラスに転校してきた頃を
思い出すなぁ。
あの時と同じように漓霧は、
笑顔で生徒たちの質問に答えてる。
あんな風にクラスメイトたちに接する漓霧が、
私はとても羨ましい。
漓霧に近づけない私は、
中学の時ように独りぼっちで
教室の窓から空を見上げていた。
こうしていると、
きっと漓霧は私に
気づいてくれるような気がしたから。
はぁ、・・・・・・私は弱いなぁ。
漓霧には甘えてばかりだ。
一時して漓霧は私に気づいてくれた。
「みんなごめんね。友達を待たせているから」
漓霧は丁寧に生徒たちに断りを言って
私の方にきてくれた。
「優華ごめんね、一人にしちゃって」
「うん、私は大丈夫だよ。
漓霧こそもう良いの?」
「いいの、私はやっぱり優華といたいし」
「そう、そんな風に言ってくれると嬉しい」
「ねぇ? 帰りにさぁ、歌いに行かない?」
「いいけど、お昼ご飯はどうするの?」
「それなら、私の家で一緒にどうかな?
たぶんママも喜んでくれると思うけど?」
「うん、わかった」
「よし、決まりだね。あっ!
でも優華のママ、お昼ご飯用意してたりするかな?」
「それは問題ないよ。どうせ仕事でいないし、
たぶん作り置きしてないと思うから。
母さん料理あんまり得意じゃないし」
「じゃ、私の家に行こう。
今日は優華とカラオケかぁ、久しぶりだよね?」
「そうね、二か月ぶりかな?」
「やっぱりそうだよね。
ようし、今日は無事、優華と一緒のクラスにになれたし
たくさん歌うよ」
「ふふ、あんまり歌い過ぎて喉を潰さないようにね。
前みたいに声が低くなっちゃうよ」
「ううぅ、そのことはあんまり言わないでよぅ」
「ごめんね。
でもたくさん歌いたい気持ちは私も一緒だよ。
それに、漓霧がこの前勧めてくれた
ガールズバンドの曲歌ってみたいし」
「あのバンドちゃんと聞いてくれてたんだ。
嬉しいなぁ」
「うん、良い曲だよね。私感動しちゃった。
特に歌詞が凄く良くて、泣いちゃった」
「そうでしょ、私もあの歌詞__________」
私と漓霧は音楽の話をしながら
教室をあとにした。
今日のカラオケはとても楽しみ、
歌うことが大好きなこともあるけれど。
私が漓霧にしてあげれるのは、
彼女が喜んで褒めてくれる歌を
聴かせることだけだから。
___だからお願い、私を一人にしないで