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1.

お待たせしました。やっと更新です。

矛盾を訂正しました。

大学3年→大学2年

栂崎香波→小山かなみ

ご迷惑をおかけしました。

 『Cafeカフェ Rapunzelラプンツェル』それは東京の某所にある穴場のカフェである。美味しいコーヒーと落ち着きのある店内、店主自慢の庭は常連客の心をつかんで離さない。こじんまりとしたこのカフェは店主とたった一人のアルバイトで切り盛りしている。

 今は日も暮れ、そろそろ閉店かという時間。

 店主ことマスターはグラスを磨きながら、店内の掃除をしている健太郎に声をかけた。

 「そういえば、健太郎は来年大学3年だったか」

 「はい。そうですけど」

 「そうか、大学生活なんてあっという間だな。卒業後はどうするんだ。実家帰るのか」

 「いや、今のところはこっちで就職するつもりですよ」

 健太郎の実家は富山のあり、農業を営んでいるらしい。健太郎は長男だが、実家は弟が継ぐらしく、東京で就職しても問題ないそうだ。

 「ふうん。東京でなんかやりたいことでもあったのか」

 そう聞かれた健太郎は掃除する手を止めて、少し歯切れが悪く言った。

 「やりたいことがあった、というか思い出したというか。小さいころからなぜか絶対東京に行くんだって思ってて、こっちに来たわけなんですけど、この間、子供のころの夢を見て、その理由がわかったんです」

 そこで一度言葉を切った。

 マスターの先を促す視線に掃除を再開しながら口を開いた。

 「幼馴染を探しに来たんです」

 「・・・・・ほう?」

 思いがけない言葉に初めて興味がわいたとでもいうように、顔をあげて健太郎を見る。健太郎は照れくさそうに、困ったように、ガシガシを頭を掻いて、続けた。

 「小5の時に、仲のよかった女の子が東京に転校することになって、その時約束したんです。絶対に会いに行くって。まあ、今の今まで忘れてたんですけどね」

 一か所に集めたごみを塵取りでとる。

 うつむいた健太郎の表情はわからない。

 「それで、その娘は探すのか。今頃思い出したって言っても、そのためにわざわざ来たんだろ」

 グラスを磨き終わって、カウンター席に座りながらマスターが聞くと、パッと笑顔を向けてこう言った。

 「もちろん。思い出したからには会いたいです。一応母に連絡してその子の名前を聞いて、写真も送ってもらいました」

 「子供の約束なんて忘れてるんじゃないか。お前みたいに」

 行動の早い健太郎に呆れを隠さずに言うが、健太郎は朗らかに笑って気にしない。

 「そりゃ、もちろん、見つかっても、いきなり会いに行くのは無理かもしれないですけど、約束しましたから」

 「そうか。ま、頑張れよ。ちなみにその子の名前はなんていうんだ」

 「小山かなみです」

 店に来なくなった彼女と同じ名前。

 「珍しいこともあるもんだな。彼女なんじゃないのか。苗字なんて変わるだろ」

 「それはないと思います。だって、あの子の髪は茶色でしたから」

 黒髪が茶髪に変わる話は聞くが、逆は聞かない。彼女が髪を染めていないのなら、きっと同じ名前の別人だろう。

 「そんなに簡単に見つかったら苦労しませんよ。それに、香波さんが万一あの子だとしても、香波さんに会えなきゃ意味ないですし。じゃあ、僕はこれでお先に失礼します」

 笑おうとして失敗したような変な顔をして、健太郎は使っていた道具を片付けて帰って行った。

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