地下通路
この話は、最近友だちのEちゃんと“ある場所”に同人誌を買いに行った時の話なんだけどね。場所は結構有名なとこだから、一応名前は伏せるけど……察してね。
それは“太陽”の“光”も届かない、地下通路を歩いている時のこと。……っていっても蛍光灯がビカビカ光ってるから、薄暗かったりはしないんだけど。
その日は平日で人はまばらだったけど、結構人はいた。人通りの多い、わりかしみんなが使うような、広くて長い地下通路なの。
そこを二人で歩いててね。両脇には空港にあるような動く通路……なんて言ったらいいのかなぁ……“平面のエスカレーター”って感じのやつ。あれがあったんだけど、それは使わずに、真ん中を歩いてた。それで「今日は何を買うー?」みたいな話を、ダラダラしてたの。そしたら、
「あっ」
って言って、そのEちゃんがその場に急に止まった。私、何か忘れ物でも思い出したのかな? って思って、
「どうしたの?」
って。そしたら、
「……ううん。なんでもない」
そう言って、ごまかす様に笑った。私の方も気にも止めずに「そっか」って、さっきまでしてた話を再開したの。でもね、
「あっ……。……もうっ!」
Eちゃんはまた立ち止まると、そう言って私の手を取り、早足で通路を歩き始めた。「行こっ」って小さく呟いて。私は意味が分からなくて、
「へっ? う、うん」
とか言って、追いてった。
エレベーターで外に出て、「どうしたの?」って私が聞くと、彼女困った顔しながら、こう言った。
「……髪、引っ張られた」
意味が分からなかったわ。だって歩いてる時、私たちの近くを歩いてる人なんていなかったから。それでポカーンとしてると、
「いっつもこうなの。そこ歩くと」
って。そこで私、思い出したわ。
――修学旅行で沖縄に行った時、当時使ってた防空壕を見に行った。そしたらそこに向かって歩いてる途中、案内の人が、
『影響受けちゃう人も結構いるので、今の時点で気分が悪い人は、見なくてもいいですよ』
って言った。すると、隣にいた男の子が補足するように、
「霊感あるやつは、見ちゃうらしいゼ。色々と」
って言って、周りのみんなを怖がらせてた。
……その時、さっきまですぐ近くにいたEちゃんは、気づけば遠くにいた。
なんだかこっちを見るのが嫌みたいな感じで、ずっと空を見てた――。
あぁ、Eちゃんって……って思った。
“そうゆうの、見えちゃうんだ”……って。
しかも髪の毛引っ張られるだなんて、相当なんだなぁとも思った。……でも本人はそのことを私に言ったこととかはなかったし、あんまり人に言いたくないんだなぁ、とも思った。
そりゃそうだよね。もしかしたら気味悪がられたりだとか、そうゆうことも考えられるし。
私はそんなこと、思わないのに。そう思って、それ以上追求するようなことを言うのはやめた。
それからもEちゃんとはその街によく行くけど、もうその地下通路は通ってない。
……その場所は過去……日本史の教科書にも載るような、歴史的な事件が起こった場所だった。