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黒い陰
いいえ、私は傷つけてばかりだ。
それにこれから一番大切な人を傷つけようとしている。
私のせいで、彼はもう立ち直れないかもしれない。
「いいんだよ、泣きたい時は泣くといい。そうすればまた、頑張れるんだから」
その言葉に、しばらく嗚咽が止まらなかった。
親を亡くしてから、クリスチャンに出逢うまで心から甘えられることはなかった。
アダムは辛抱強く永遠の背中をさすり、慰めの言葉を囁き続けた。
永遠が静かになるとアダムはポケットからハンカチを取り出した。
「拭きなさい。かわいい顔が台無しだよ」
アダムが屋敷を仰ぎ見ている間に、涙の跡を拭う。
永遠は屋根の上から黒い陰がじっと自分を見守っていたのには気付かなかった。
アダムがそっとクリスチャンに頷くと、彼は屋敷の中に戻った。
「アダムさん、聞きたいことがあります」
鼻声ながらしっかりとした口調で永遠は言った。
アダムは赤く腫れた目でじっと見つめられ、居ずまいを正した。
「なんだい?」




