日暮れのベンチで
屋敷を出たとき永遠は一人だった。
太陽は稜線にかかり、空は赤や紫、緑や青と思い思いに染まっている。
深く息を吸い込んで吐き出す。
ふと思い立ち、ふらりと屋敷の周りをめぐってみる。
玄関口から反時計回りに周り、九時のところへ来ると白く塗られたベンチが置かれていた。
そこには黒い大きな影の先客がいた。
「アダムさん。お邪魔をしてしまいましたか?」
何だか静かにしなくてはいけない気がして、永遠はそっと呼びかけた。
アダムはこちらを向き、隣りを叩いた。
「いやいや。かわいいお嬢さんは大歓迎だよ」
永遠はその言葉に甘えて隣りに腰を下ろした。
「美しいところですね、ここは」
目の前に立った梨の木が、地面に自分よりも背の高い影を落としている。
「そう言ってもらえて嬉しいね。ここには都会のような娯楽はないし、気候的にも住みやすい土地だとは言い難い、特にあなたのような人間にはね」
アダムは優しく永遠の手に触れた。
永遠はため息を吐いた。
「人間だけとは言えません」
アダムが慰めるように手をぽんぽんと叩いてきた。
「友達がひどいことにならなくて良かったね」
「えぇ。でもブリスを苦しめたのは私の…」
「自分を責めてはいけないよ。永遠さんは知らなかったのだからね。咎められるべきは水に毒を入れたものだ」
アダムが顔をこちらに向けた。
「あなたに謝らねばならないことがあるんだ」




