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発熱
いつもより距離をあけて、彼は止まった。
永遠には物理的にあけられた距離と同じくらい心が離れてしまったように感じられた。
そっと痣のついた頬に手を伸ばされて、思わず永遠は身を引いた。
クリスチャンの目に傷ついた色が浮かんだ。
彼は静かに手を下ろし、自嘲的な笑みを浮かべる。
「君はあのウサギよりも警戒心が強いな。怖がらなくていい。故意に君を傷つけはしない」
彼は“故意に”という部分を強調して言った。
永遠は袖口をいじりながらおずおずと言った。
「私、自分で川に落ちたんじゃないの。誰かが…」
ドサッという音を聞き、永遠は言葉を切った。
「ブリス?」
ブリスは身体を丸めてベッドに横たわっている。
心配した永遠が手を触れると、ブリスは熱かった。
「熱があるわ!私のせいで川に入ったから…」
「いや、ウェアウルフがそんなことくらいで熱を出すはずがない」
「だけど…実際、熱があるのよ。理由なんて関係ないわ」
クリスチャンは難しい顔をして部屋を出て行った。




