獣の中の死
クリスチャンは部屋を飛び出した。一瞬で館の前に来ると、さっとあたりを見回した。
どこにいる?
耳を澄ましたが何も聞こえない。
くそっ、遠くへは行くなと言ったのに。
だが永遠のせいではない。自分がいけないのだ。彼女は傷ついていたのに一人で行かせた。彼女にとっては不慣れな土地で、危険だと知っていながら。
今さら悔やんでも仕方がない。一刻も早く彼女を見つけなければ。
あたりに目を走らせ彼女の行きそうな場所を探す。
森。
クリスチャン自身も一人きりで考え事をしたくなると、森にある湖へ行く。彼女は湖があることは知らないが、森に入ったのならきっと見つけているだろう。
クリスチャンはさっと飛び上がった。
永遠は獣を見つめた。それは灰色というには明るすぎる毛色をしており、目の色は右が緑で左が金色をしている鋭い爪と牙を持った大きな狼だった。
狼は右の後ろ足を引きずり唸りながら近づいてきた。
永遠は狼の瞳に魅入っていた。
きれいな瞳。
「おまえは私を殺すの?」
永遠は小さな声でささやいた。
狼は耳をピンと立て、永遠の声に耳を澄ましているように見えた。
唸るのを止めゆっくりと近づいてくる。
永遠は狼の脚を見た。何か鋭いものでざっくりと引き裂かれたようだ。いつ怪我をしたのかわからないがいまだに血が溢れ、命が流れ出していく。
視線を狼の目に転じると、その中に通じ合うものを見て取った。
死。
狼は死を覚悟していた。さっきは離れていたから瞳の美しさにしか気がつかなかったが、今は永遠が手を伸ばせば触れられるほど近づいていた。
「おまえは死んでしまうの? こんなに美しい瞳をしているのに」
永遠はゆっくりと手を伸ばしていった。