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メールラビット
クリスチャンは座り込み、モミの木にもたれかかった。
“ほかの女性と一緒にしないで”
“あんたは馬鹿だ”
二人の言葉が甦ってきた。
本当にそうなのだろうか。永遠はほかの女とは違うのか?わたしは間違っているのか?
だが永遠と初めて会ったとき、彼女はわたしがヴァンパイアだと知っても恐れなかった。それどころか三ヶ月間わたしと過ごしたいと言った。
最初からヴァンパイアに変化することで死を免れようと企てていたからなのか。
成功すれば永遠の命を手に入れ、失敗しても定めどおりの命を過ごすだけ。
クリスチャンは空を見上げた。
散々永遠を責め立てておきながら、彼女はそんな打算的な女ではないと思っている自分がいた。
クリスチャンには自分がわからなかった。
彼女と初めて会った時のように、またしても混乱の渦に飲み込まれた。
長い年月に刻み込まれた疑念はそう簡単に抜けるものではない。
人間が自分の利益のためならどれほど残酷に、非情に、無慈悲になれるか、クリスチャンは嫌というほど知っていた。
目を草地に転じると、ウサギが跳ねてきた。
「お前は何故ここにいる。あいつはどうした?永遠は…?」
クリスチャンは飛び上がった。




