二日酔いにはココアを
「またってどういうこと?」
クリスチャンは館の薔薇や亡霊のことを永遠に話した。
「君には話すつもりはなかった、無駄に怖がらせるだけだからな。だがこうなっては、知っていた方が君自身気を付けられるだろう。もちろん我々が常に君を守るが」
「…でもあなたのことを好きになった人が、私に嫉妬しているだけかもしれないじゃない?」
クリスチャンは茎を指先でひねり、薔薇を回転させた。
「それなら何故、直接わたしに迫らない。君を蹴落としたところで、わたしがその女を気にかけるようにはならないぞ」
…確かにその通りだ。
永遠は同意の印に頷いた。
ブリスが胃を押さえながら言った。
「けど、相手が亡霊ならどうやって永遠を守んだ?」
クリスチャンは脚を指先でトントンと叩いている。
「…わからない。そもそも本当にジョセフィーヌの仕業なのだろうか?彼女は今まで脅迫状をよこすような回りくどい事はしなかった。薔薇を切ろうとした女の指を切…」
ブリスがわざとらしいくしゃみをした。
「ったり、直接的だった」
ブリスは髪をクシャクシャとかき回した。
「結局俺らが永遠を守りゃーいいんだろ。何でもきやがれ、俺がやっつけてやっから。けど今は…ギブ!」
ブリスが部屋を飛び出した。
扉がバタンと閉まる。
「大丈夫かしら?」
永遠はブリスが一口しか口をつけず、サイドテーブルに置かれたマグを覗きこんだ。
「やっぱり二日酔いにココアは合わなかったのね」
「永遠、聞いてくれ。敵がわからない以上、我々は館に戻るのが得策だと思う。ここには生物が多すぎる」
永遠はクリスチャンの手を取った。
「それでどうするの?私達は隠れて暮らすの?」
クリスチャンを見上げ、落ち着いたしっかりとした口調で告げる。
「私は毎日毎日、怯えて暮らすのは嫌よ。まだやりたいことがたくさんあるんだもの。私、あなた達が守ってくれるって信じてるわ。それに、もし駄目だったとしても、別れがほんの少し早まるだけよ」
クリスチャンが手をぎゅっと握り締める。
「もしは起こらない。わたしがそんなことはさせないから」




