血の匂いを嗅ぐ
「ただのイタズラだと思うわ」
ココアをすすりながら言う。
「怪我もしているのにか?」
「ケガ?」
カードから視線を上げたクリスチャンの目が爛々と光っている。
「君の血の匂いがする」
あぁ、忘れてた。
「見せて」
指を差し出す。
血の滲んでいた傷はクリスチャンの舌が触れるとすぐに癒えた。
「誰だ?誰がこんなことをした?」
クリスチャンの牙が伸びた。
「落ち着いて。薔薇の棘が刺さっただけだから」
顔色を変えたクリスチャンの牙がすっと引っ込んだ。
わぁ、牙ってこんな風になってたのね。もう一度やってくれないかしら?
「それは今どこにある?」
うーん、そんなことを言える雰囲気じゃないわね。
クリスチャンに落とした薔薇が見えるよう右にずれた。
「あっ、気をつけて。棘がついてるから」
だがクリスチャンはすでに、汚らわしいものか何かのように花びらの部分を指先で摘まみ、目を眇めて観察していた。
さっと立ち上がると、つかつかとブリスのベッドに近づいた。
「おい起きろ。我々は結束しなければならない」
クリスチャンはブリスの毛布を剥いだ。
「いつまで寝ているつもりだ?この役立たず」
「うー、大きな声出すなって。頭いてー」
「ココア飲む?半分飲んじゃったけど…それともお水の方がいい?貰ってきましょうか?」
頭を抱えたブリスが、永遠の差し出したマグカップをじっと見つめた。
「半分飲んだ?…ならもらう」
ひと口飲んだ後、こくりと唾を飲み込んだ。
「永遠の命が狙われている」
「クリスチャン、それは大げさじゃない?たかがカードと薔薇くらいで」
クリスチャンはブリスの前に棘つきの薔薇を突きつけた。
「また薔薇かよ」
ブリスはベッドに倒れこんだ。




